15万人ともいわれる陸上自衛隊の隊員たちは、いまだに「突撃訓練」を命じられている。『自衛隊は市街戦を戦えるか』(新潮新書)を出した元陸将補の二見龍氏は「戦争の形態は変わった。ロシア軍のウクライナ侵攻は新しい戦争の典型例だ。陸上自衛隊は『突撃訓練』を続けている場合ではない」という——。
ウクライナ侵略にみるロシア軍の戦い方
前回、前々回と陸上自衛隊が第二世界大戦の尻尾を引きずったままの訓練を続けていることを書きましたが、私は自衛隊の訓練のあり方に危機感を抱いています。
今や戦争の形態は変わっているからです。
「戦闘の形態が昔とは違ってきている」と言われれば、多くの人は「それはそうだろう」と思うに違いありません。しかし、何がどのように違ってきているのかを、説明できる方は少ないのではないでしょうか。
違いがはっきりと分かるのが、2014年ウクライナ侵略時のロシア軍の戦い方です。この戦争で行われたことは多くの軍事関係者を驚愕させました。戦い方が大きく変化してきたことを内外に知らしめたのです。
その輪郭は2016年のアメリカ議会で明らかになりました。当時、ロシアは、電子戦によってウクライナのレーダーを使用不能にするとともに、サイバー攻撃(ハッキング)で発電所、メディアの機器を乗っ取りました。GPSが使えなくなった偵察用のドローンは自己位置を評定できなくなり、地上へ降下したまま動かせない状態にされてしまいました。