陸上自衛隊はどんな想定で訓練をしているのか。『自衛隊は市街戦を戦えるか』(新潮新書)を出した元陸将補の二見龍氏は「先の大戦の伝統に引きずられて、『無駄弾を撃つな』という考え方が根強い。また、死亡者は4時間後には戦闘に復帰するという想定だ。これらは現実の戦闘からかけ離れている」という――。
負傷した兵士を担架に乗せて運ぶ2人の第2次世界大戦の陸軍兵士
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「補給」にも残る旧軍の“伝統”

前回は陸上自衛隊が日露戦争の203高地の記憶を保ち続け、いまだに「突撃」をやめられない理由を書きました。今回は新著『自衛隊は市街戦を戦えるか』(新潮新書)でも取り上げた、旧軍以来の伝統が残るとしか思えぬところを挙げてみましょう。

例えば弾薬の取り扱い方などもそうです。実戦と訓練とが異なるのは、兵站(補給・整備・衛生)が重要になるところです。

実戦では、物資が部隊へ供給されなければ戦闘を続けることはできなくなります。特に重要なのは弾薬の供給です。水・食料、燃料、弾薬など毎日補給を続ける物資のうち、弾薬は補給物資の重量で約90%を占めます。

特科部隊(砲兵部隊)の保有する大砲(榴弾砲)は砲身砲と呼ばれています。砲身砲は誘導弾のように精密な射撃はできませんが、砲弾1発の価格が誘導弾の価格に比べてはるかに安価に抑えられています。

砲身砲により敵を撃破する場合、低い精度をカバーするために弾量(弾を撃つ量)を多くしなければなりません。必然的に特科部隊の使用する砲弾の量が補給物資としてかなりの量を占めることになるのです。