家族と折り合いがつかないときは、どうすればいいのか。総合格闘家の青木真也氏は「家族というつながりを信じすぎる必要はない。ほどよく距離をとる『ファミリー』という関係性が合っている人もいる」という――。

※本稿は、青木真也『距離思考』(徳間書店)の一部を再編集したものです。

王座を奪還して「おれたちはファミリーだ」と叫んだ

「おれたちはファミリーだ」

青木真也
撮影=初沢亜利

今の僕を象徴するこの言葉を使い始めたのは、2018年春頃のことだ。

『格闘代理戦争』(AbemaTV・現ABEMA)に初めて出演したとき、その最終回で若い選手に対して掛けた言葉。言おうと意識していたわけではない。自然とあふれ出た言葉だった。

その後も連載やSNSなどで、僕はたびたび「おれたちはファミリーだ」と発信するようになった。

次に公の場で口にしたのは、ONE Championshipが初の日本大会となる「ONE:A NEW ERA IN TOKYO」を開催した2019年3月31日。

僕はメインイベントとなる第15試合で、ONEライト級王者(当時)のエドゥアルド・フォラヤン選手に挑戦。1R2分34秒、肩固めで勝利して、王座を奪還した。

この日のためにコツコツやってきて、勝てたことはもちろんだけれど、何よりONEが日本で初めて大会を開催したこのときに、ファミリーのみんなが総出で見にきてくれたこともうれしかった。

だから、勝利後のマイクで、僕はこんな言葉を残した。

「35歳になって好きなことやって、家庭壊してひとりぼっちで羨ましいだろ? 俺はこうやってな、明日もコツコツ生きていくんだよ! みんな、『おれたちはファミリーだ』って言うから、みんな頼むぞ、『おれたちはファミリーだ』! ケツに『GO』って書いてあるけど、明日もGOだ!」

途中から青木コールが湧き起こっていた。その会場にいて、格闘技を好きで、青木真也に関心がある人たち全員をファミリーだと僕は思っていたから、「おれたちはファミリーだ!」と叫んだ。