思ったよりも長い、リタイア後の人生。ゆとりある生活のためには年金プラス5000万円が必要ともいわれているが、雇用年齢ギリギリまで勤め上げても、これだけの蓄えがあるのはごく少数。生活レベルを落とさずに暮らすこともままならない、という人が多数派だろう。最近では、年金プラスアルファの収入を得るために、再雇用や再就職を望む人が増えてくる。

しかし、せっかく定年後の自由な時間を使って働くのに、若者に挟まれて肩身の狭い思いをし、額に汗してやっと薄給を手に入れるのでは、割に合わない。もっと楽で、やりがいのある収入の道はないものだろうか。

意外なところに盲点はあった。タクシードライバーである。不況のあおりを受け、厳しいといわれる業界のひとつであるが、都内のタクシー会社に勤めている、あるシニアドライバーはこう語る。

「1日20時間勤務を月に7日というのが、標準的な60代ドライバーの勤務スタイル。こう言うと重労働のようですが、完全歩合制でノルマもありません。駅前でお客待ちの列に並びながらのんびりやってます。常に単独行動だから好きに休み時間が取れるし、人間関係に煩わされることもない」

ちなみにタクシーの売り上げは、基本的にドライバーと会社で折半。都内を走るタクシーの平均的な売り上げは、1日4万円弱(日当約2万円)というから、毎月年金プラス10万円を稼ぐのは、素人目にも難しいことではなさそうだ。

シニアドライバーは、さらに言う。

「タクシー会社は少しでも売り上げがあがりさえすればいいので、たとえ1日の売り上げが5000円でも文句を言われない。営業のために必要な普通二種免許は入社してから取らせてくれるところがほとんどで、リタイア後のシニア世代も積極的に採用しています。私も数年前、リタイア後に勤めはじめました」

過当競争により、タクシーだけで家族の生活を支えるには、あまりにも収入が少ない。しかし、年金プラスアルファの小銭稼ぎ感覚でなら、気楽に続けられそうだ。