一方、自分の経験を活かせる仕事で生きがいを感じたい、という人には「NPO法人 シニア大樂(だいがく)」(www.senior-daigaku.jp/)の講師登録制度がうってつけ。シニア大樂では、主にリタイアしたシニア世代を中心に、多種多様な前職を持つ講師団を編成。地方自治体や大学の公開講座に、いわゆる「アマチュア講師」を派遣している。リストを見てみると、元高校教師や薬剤師、銀行員から俳優、自衛官まで幅広い。様々な職歴を経た講師陣がまるで商品カタログのように並んでいる。年齢も50代前半~80代と、こちらもかなり間口が広いようだ。

「『老後のマネープラン』について話す元保険会社社員もいれば、『旅行業界の裏側』について話す、70代の元フライトアテンダントもいます。共通しているのは、どれも講師の実体験なしには語れない話だということ。うまく失敗談を織り交ぜて、観客を笑わせることのできる講師は人気が出ます」

リタイア後に働くなら、せめて人間関係が気楽な仕事か、やりがいを感じられる仕事を選びたいもの。

リタイア後に働くなら、せめて人間関係が気楽な仕事か、やりがいを感じられる仕事を選びたいもの。

こう話してくれたのは、NPO法人 シニア大樂の副理事長・藤井敬三氏。自身も「暮らしに笑いを」というお題で、笑いと健康について講演し、今や日本全国からお呼びがかかるほどの人気だという。

講師になるための審査は、簡単なものだ。400文字程度の小論文をシニア大樂に送り、2年間で2000円の登録手続料を支払うだけ。あとは勝手に講演の依頼がやってくるという仕組みだ。シニア大樂では講師の講演スキルを高めるための講習会も行っている。人前で話すことに自信がなければ、まずはそこへ行って腕を磨くことをお勧めする。

「人気講師になると、年間数十回の講演をこなす人もいます。自分たちが現役時代には他人に話すことが決して許されなかった業界の暴露話が評判を呼んでいます」(藤井氏)

1回約1時間半の講演で、得られる講師報酬は2万円から5万円程度。時給1万円以上のアルバイトだと思えば、価格的には悪くない。何より、自分の経験を社会に還元できるのだ。これはリタイア後のシニアにとって、何にも代え難い喜びだろう。

気楽な職場と社会還元、どちらを選択するかは、個人の自由である。リタイア後の生活を後悔のないものにするためにも、副業は存分に検討してもらいたい。