政治と行政の役割分担

確かに、これまで長年積み重ねてきた行政のやり方や方向性を変える政治決断それ自体は、必要な場合がある。

しかしそのような判断をする場合には、これまでのやり方や方向性を転換した後の別の「計画」を行政的にしっかりと作る必要がある。しかもその別の計画を作りそれを実行する「期限」を設定することが最も重要だ。

そうでなければ、これまで積み上げられてきたやり方(=計画)が白紙になっただけの状態になり、まったく何の策もない状態になってしまう。これは極めて危険な状態だ。たとえこれまで積み上げられてきた計画が不合理、不条理なものであったとしても、計画がまったくない状態よりは、何らかの計画がある方がまだましだ。

(略)

政治がこれまでの行政計画を否定するのであれば、それに代わる行政計画を必ず作らなければならない。このことを肝に銘ずることなく、とにかく目の前の行政を全否定する政治家が多すぎる。

行政の方向性を決めたり、決断したりするのは政治だ。しかしその方向性や決断を具体的に実行して形あるものにするのは行政だ。これが政治と行政の役割分担である。

この役割分担がしっかりできていない中での政治決断は、単なるパフォーマンスで終わってしまう。そして場合によっては悲惨な結果を生んでしまう。

政治家はこれまでの行政を変える派手な決断をすることを好む。僕もそのように見られていたと思う。

しかしそこには必ず行政的な裏付けが必要であり、その裏付けができないのであれば、政治は従来の行政計画を追認せざるを得ない。行政の裏付けのない政治決断は、社会情勢の要請から後に必ず覆されてしまう。

僕の一見派手に見える政治決断には、必ず行政の裏付けが伴っていたものだと自信をもって言える。一定の期限内に行政の裏付けが取れなかったものは、従前の行政計画に戻る修正判断を後にきちんとやったつもりだ。