対立と分断を煽る危険な指導者の多くは、選挙によって選ばれている。こうした人物がやすやすと権力を握るのは、彼らが仕掛ける「感情戦」によって有権者が分断され、互いに潰し合うからだ。どんな手口を使うのか。紛争解決の専門家であるビル・エディ氏が解説する――。

※本稿は、ビル・エディ著『危険人物をリーダーに選ばないためにできること』(プレジデント社)の一部を再編集したものです。

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「対立屋」は有権者を4つの集団に分けて戦わせる

対立を煽る政治家〈対立屋〉は、「感情戦」を仕掛け、人をたぶらかしたり攻撃したりしながら、コミュニティや国家全体を分断、支配していきます。このようなことが可能になるのは、有権者がこの感情戦によって4つの集団「熱列な支持派」「憤る抵抗派」「おとなしい穏健派」「幻滅した棄権派」に分かれて、お互いに際限なく戦い続ける傾向があるからです。

ビル・エディ『危険人物をリーダーに選ばないためにできること』(プレジデント社)
ビル・エディ『危険人物をリーダーに選ばないためにできること』(プレジデント社)

対立屋によって分断される四つの集団について、詳しく見ていきましょう。

熱烈な支持派

対立屋の味方です。彼らは指導者のためなら何でもします。対立屋は特別な人物であり、他の人が見向きもしなかった自分たちのニーズを満たしてくれると信じ、対立屋が非難の標的を攻撃するのに賛同します。

憤る抵抗派

対立屋の強敵です。彼らは対立屋の言動を危険視し、強く反対しないとコミュニティや国が悲惨な目にあうと考えます。

おとなしい穏健派

穏健派は、対立屋の言動はおおむね政治的なものであるとみなして、政党や政策に基づいて賛成なり反対なりの票を投じます。彼らは対立屋の性格的な欠点や攻撃はささいな、あるいは一時的なものだと考え、ほぼ無視します。

幻滅した棄権派

棄権派は政治にもっとも強い嫌悪感を示し、政治には関わりたくないと考えています。自分の一票に意味があるとは思っていないため、わざわざ投票しません。対立屋も他の政治家とまったく同じだとみなしています。

図表1は、この四つの集団を図示したものです。

対立を煽る政治家による4分割
画像=『危険人物をリーダーに選ばないためにできること』