指導者と支持派は結束し、他の集団を無力化する
対立屋が感情的な攻撃を行うと、すべての集団が非常に感情的に反応し、ぶつかり合います。それによって対立を煽る指導者と支持派の結びつきはさらに強まり、他の三つの集団を無力化していきます。そのパターンは次のようなものです。
熱烈な支持派
支持派は、自分たちの指導者を批判し、自分たちを見下す抵抗派を軽蔑します。抵抗派は愛国心がなく、もしかすると邪悪な存在なのかもしれないと考えて憎みます。穏健派については、政治的中心にいる傾向が強いことから単に「エスタブリッシュメント」の代表として切り捨てます。
憤る抵抗派
抵抗派は支持派を軽蔑します。支持派がなぜ対立屋を支持できるのか理解できず、支持派は愚かだと考えます。穏健派に対しては、能天気で、対立屋の要求にやすやすと応じすぎると考えます。また、棄権派にも腹を立て、投票しないことを恥じるべきだと言います。
おとなしい穏健派
穏健派は、自分たちの穏やかな価値観に喧嘩を売ってくる支持派の極端な言動を嫌います。また、抵抗派も嫌いです。彼らのように怒り、抗議する必要性を見いだせず、それを見てうんざりさせられるからです。また、棄権派には総じて失望しています。
幻滅した棄権派
棄権派の中には、対立屋の攻撃的な性質を嫌う人もいますが、対立や分裂を招いた支持派と抵抗派にも責任の一端はあると考えています。棄権派は、両方の陣営から自分の側に投票するよう圧力をかけられていると感じ、たいていは「政治的な」人々を無視して自分の生活に集中します。
「対立屋」は反対派の投票パターンにまで影響を与える
対立を煽ることで権力を手にする「対立屋」は、対立や混沌、危機、恐怖が続いているように演出し、この四つの集団を紛争状態や膠着状態に巧みに保ち続けます。演説を繰り返し、それぞれの集団の言動を利用して他の集団の怒りを煽るようにするのです。彼らが権力を握り、その座に居座れるのはそのためです。
興味深いことに、こうしたやり方で成人人口の40%(支持派)程度以上の支持を得ることはありません。そのため、他の三つの集団(残りの60%)がまとまればたやすく多数派になることができるのですが、この三つの集団はしばしば分断されたまま、感情的に無益なことをしています。
協調型の指導者は言葉を尽くして分断を克服し、コミュニティを鼓舞して、共通の課題を実現するために小異は脇に置くよう呼びかけますが、分断を煽る指導者は言葉を尽くして人々を反目させ、コミュニティ内部の個人や集団に対して行動を起こすように仕向けます。
皮肉なことに、対立屋はこのような対立の「両方の側」を煽ることができます。支持者をおだてつつ、分断された集団の一方を攻撃し、返す刀でもう一方の集団を攻撃するのです。この分断された反対派は、対立屋に好意を持っているわけではないのですが、別の反対派に対する対立屋の批判に同調する傾向があり、それが投票パターンにも反映されます。