「敵」を攻撃することで人々の支持を集める。そうした危険な人物が、リーダーとして選ばれてしまうことがある。紛争解決の専門家であるビル・エディ氏は「ヒトラーもスターリンも、そうした『悪性のナルシスト』だった。困ったことに私たちには危険人物に投票する傾向がある」と警鐘を鳴らす――。

※本稿は、ビル・エディ著『危険人物をリーダーに選ばないためにできること』(プレジデント社)の一部を再編集したものです。

怒りと悲しみを表現する2つの顔を持つ幸せなピエロマスクの男
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他人の人生をストレスだらけにする「対立屋」

私たちがふだんどのように考え、感じ、行動するか。それが、私たち一人ひとりのパーソナリティです。たいていの人は、揉め事に巻き込まれるとそれを解決しようとしますが、対立を煽るパーソナリティの持ち主の場合は、逆なのです。

ビル・エディ『危険人物をリーダーに選ばないためにできること』(プレジデント社)
ビル・エディ『危険人物をリーダーに選ばないためにできること』(プレジデント社)

彼らはあらゆる関係は本質的に敵対的なものだと考えます。彼らは絶えず自分は誰かの敵とみなされ、脅かされていると感じ、しばしばきわめて敵対的な対応をするのです。その結果、彼らはほぼどんな場合でも、次から次へと不要な対立を生んでいきます。

さらに悪いことに、彼らは対立を解消することには興味がありません。それどころか、対立を悪化させます。他人が何人傷つこうと、自分の行いが自分の首を絞めることになろうと、お構いなしです。彼らはみな、同じような言動のパターンを共有しており、いったんわかればその言動のパターンは、きわめて予測しやすいものです。

彼らの言動には大きく4つの特徴が見られます。

1 標的とした相手を執拗に非難する 
2 何にでも白黒をつけずにいられない 
3 攻撃的な感情を抑制できない 
4 極端に否定的な態度を取る 

対立屋は自分自身がなぜ対立を煽る言動を繰り返しているのか理解していないので、事態が悪化するとどんどん保身に走って、身の回りの人々を「非難の標的」として攻撃します。そのため、対立屋はしばしば本当の友人を持てずに、コミュニティの中でも危険な人という評判を得てしまいます。身の危険を感じるような脅迫をしてきたり、果てしない不平不満で周囲の人の人生をストレスだらけにしたりしてしまうのです。

「カリスマ的な魅力」に覆われた本性

いやな隣人、あまりに気むずかしい同僚や上司、事業主。みなさんの家族の中にもいるかもしれません。実際、対立屋はどこにでもいます。ただ、ほとんどの人は、対立屋は単に短気で適応が苦手で孤立した人と思うばかりで、対立屋のパターンが見えていません。今日問題とされていることの中心にしばしば対立屋がいることや、その数の多さがわからないのです。

対立屋はどの国、どの文化でも一定の存在感を持っています。しかも、その数は年々増える傾向にあります。荒野に一人で住んでいるのでもない限り、対立屋を避けることはできません。

対立屋にはもう一つ、驚くべき特徴があります。彼らが欲しいものを手に入れられるのは往々にしてそのおかげなのですが、彼らはきわめて魅力的で説得力のあるカリスマの持ち主にもなれるのです。彼らは、少なくとも最初のうちはそのように振る舞います。ところが、親しくなったり、対立が発生したりすると、化けの皮がはがれて、本性を見せ始めます。