事故で引退した人も、10年後には前向きになっている
とはいっても、「今年が最後」の人とそうではない人とでは、心の持っていき方はおのずと変わってくる。今年の大会に出て引退する予定だった人は、このまま引退すると後悔をずっと引きずっていきそうだと感じているかもしれない。まず私のアドバイスは、自分なりに踏ん切りをつけて、当初予定していたタイミングですっきりと引退をすることだ。踏ん切りの付け方としては、全力でどこか近所を走ったり、自分の思いを文章にしたりするなど、自分に合った方法でやる。
時々、競技人生を事故やチームの不祥事の影響などでそのまま引退した人に会うことがある。数年ほどは引きずっているように見えるが、10年を過ぎた人は誰もが想像以上に前向きになっている。無念の引退の悔しさをぶつけるために、留学して新しい道を見つけた人もいる。不条理な経験を乗り越えた人は「あれがあったから今の自分がある」と言う。いまは競技がすべてかもしれないが、競技よりも長く人生は続く。競技とは違う方法で今の悔しさをぶつけるものが必ず見つかる。
2週間しっかり落ち込む→「今できる目標」を立てる
来年以降も現役を続ける人も、目標がなくなって落ち込んでいると思う。落ち込む時の作法は、中途半端にしないこと。思い切って落ち込んで徹底的に後ろ向きになるのが大事だ。ただし、後ろ向き思考が常態になってしまうと容易に立ち上がれなくなる。2週間くらいは思う存分落ち込んで吹っ切ろう。
吹っ切った後は次の目標を立てる。競技者は未来の目標から逆算し、今やることを決めるものだが、現在のようにすぐ状況が変わり誰にも先が見通せない状況では、中長期的な計画を立ててもあまり意味がない。先を見るのではなく、目の前ですぐ自分に努力できることを積み重ねる。大事なことは具体的な目標だ。英語を学んだり読んだり、競技と関係のないことでも何でもいい。目標が定まらない時は自分に負荷をかけた方が落ち着くことがある。