野球の強豪校では、たびたび部内での暴力事件が報じられている。なぜなのか。スポーツライターの元永知宏氏が、元球児への取材から、その実態を追う——。(第1回/全2回)

※本稿は、元永知宏『野球と暴力 殴らないで強豪校になるために』(イースト・プレス)の一部を再編集したものです。

バケツに収められた野球ボール
写真=iStock.com/Marco Garcia
※写真はイメージです

「暴力的な指導もやむをえない」は本当か

「横浜高校の監督と部長を、部員への暴力で解任!」(2019年9月28日発表)

この衝撃的なニュースを野球ファンはどう受け止めたのだろうか? おそらく、反応は3つに分かれるはずだ。

・高校野球の強豪校でそんなことが起こるはずがない
・いまだに暴力的な指導をしているのか
・どうして表面化する前に抑えられなかったのか

高校野球の歴史に詳しい人ほど、冷静に受け止めたことだろう。高校野球で暴力的な指導が長く行われていたことは周知の事実。かつて名監督と呼ばれた多くの指導者が、厳しい指導で選手たちを鍛え上げ、全国の頂点を目指した。気骨と根性のある選手が好まれ、体力の限界を超える猛練習に耐えてこそ、勝利はつかめるのだと考えられてきた。強いチームほど、厳しい指導は当たり前。ときと場合によっては、暴力的な指導もやむをえないと。