実は選手が「気にすべきこと」はほとんどない
どうしても誰かの責任だと考えたい(実際にその場合もある)、恨みたい、なんなら復讐したい、という気持ちになるかもしれない。しかし、それで事態が改善しない場合、すべての努力は無駄になる。
コロナウイルスの感染拡大はいつまで続くのか、それに伴う渡航制限などの政府の方針はどうなるのか、試合は開催されるのか。されるとしたらどんな形になるのか。これらはすべてコントロールできない。
そうなると実は選手は気にする事はほとんどないということになる。これまでどおり練習を続けるだけだ。オリンピックの延期、重要な大会の中止に伴い、今後もさまざまな混乱が予想されるが、いろいろ想定しても、結局日々の練習を淡々とするということしか選手にはできないし、それこそがやるべきことだ。
私がすすめるクライシスの過ごし方
今回のようなクライシスでは、コントロールできることは極端に限られている。そこに意識を向けて過ごすしかない。以下の3点を意識しつつ、喧騒から距離を取り、淡々とトレーニングを行うことをお勧めする。リモートワークなどでこれまでと勝手が異なる環境で仕事をし、成果を出さなくてはいけない人にとっても参考になるかもしれない。
●安心できる場所を確保する
練習を続けるためにベースとなるトレーニング場所を確保する。その場所からしばらく移動できなくなることも考えられるので、安心して長く練習できる場所を見つける。
●情報と会う人を制限する
情報がたくさんあることは普段はいいことだが、状況が刻々と変わる状況では精神が疲弊し、情報が多すぎて焦って無駄な動きをしてしまう恐れがある。できれば情報収集は信頼できる人か機関にお願いし、対応しなければならないときだけ教えてもらうようにしたい。SNSは玉石混合の情報が行き交うので、気になるようであれば一旦停止するか、発信だけに専念する。一方で選考基準や選考会についての情報は誰かに頼んでもいいので意識して取りに行く。早い情報を知ればそのぶん有利になる。
●明日のことしか考えない
どうしても未来のことを考えて不安になるが、危機において未来を考えることにほとんど意味はないので、今日1日できることだけやり、ご飯を食べてゆっくり寝る。これを繰り返す。いつこの状態が終わるのかを考えるのではなく、今日が積み重なっていったらいつの間にか元の日常が戻ってきていたという形に持っていきたい。一方で、集中しすぎて自分を追い込みすぎないように注意する。心の疲労は目に見えにくく、疲労している選手は本番で力を出せない。今日の練習に集中して、練習が終わったら好きなことをやってのんびりする。自分で思っているよりも二割くらい力を抜くのがちょうどいい。