「ナイトパック」は通常の3倍増ペースに

新型コロナウイルスの感染拡大で、さまざまなビジネスのあり方に変化が生じている。そのひとつにカーシェアリングサービスがある。

最大手のタイムズカーシェアは貸出件数は減っているが、会員数は伸びている。背景のひとつに、夜間~翌朝の定額プラン「ナイトパック」の大幅値下げがあるとみられる。もともとは夜間に外出をする人に向けたプランで、通常は2640~5280円だが、コロナ禍においても、出社せざるを得ない、移動せざるを得ない人をターゲットとし、3月6日から全クラス一律500円とした。その結果、利用者が通常の3倍増ペースになったという。このため値下げは3月末までの予定だったが、4月20日まで延長した。さらに4月20日から8月1日までは新キャンペーンとして、料金を480円にしている。

タイムズカーシェアを運営するパーク24の業績は弱含みだ。主力である駐車場事業の4月の売上高は前年同月比で32.2%減。レンタカーサービスは観光需要の減少などから貸出件数が減少している。カーシェアサービスも外出自粛要請に伴い貸出件数は減少傾向にあるものの、夜間利用者などの需要をとらえ、会員増につなげている。

パーク24は、必要なサービスは何かを考え、新しい需要に対応している。この姿勢は、コロナ禍以前からのタームズカーシェアのマーケティングと変わらない。本稿ではタイムズカーシェアが試行錯誤を通じて、国内カーシェア市場で6割という大きな市場を獲得し、社会における交通インフラの一つとしての地位をつかんでいったプロセスを紹介していく。

なぜカーシェアは毎月かならず料金をとるのか

私は企業活動を「戦略計画」と「戦略実践」という二面展開に整理して分析している。タイムズカーシェアが市場シェアを拡大できた理由も、このフレームワークで分析していく。まずは「戦略計画」についてだ。

日本で主流のカーシェアリング・サービス(カーシェア)は、事業会社の提供する自動車を登録会員が共同使用する。これは「レンタカー型カーシェア」と言われ、通信システムで車両を管理し、無人拠点で車両を貸し出す。