トランプがテドロスに本気でキレている
米ドナルド・トランプ大統領が4月14日WHOへの拠出金停止を明言し、中国寄りの発言を繰り返すWHOのテドロス・アダノム・ゲブレイェソス事務局長との確執が強まっている。共和党議員団は拠出金再開を巡ってトランプ大統領にテドロス事務局長辞任を提言し、米国のインターネット上の署名サイトでは辞任を要求する100万人以上の署名が集まっている状況だ。
トランプ大統領は新型コロナウイルスを中国ウイルスと呼んでおり、WHOを「中国寄り」として激しく批判している。実際、テドロス事務局長は隠蔽工作を行っている疑いが強い中国の対応を「透明性がある」と一貫して擁護し続けている。これに加えて、WHOの台湾に対する政治姿勢、中国への配慮と見られる二転三転した対応策の公表、同事務局長の出身国エチオピアが中国から多額の援助を受けている事実などもあり、米国では同氏のWHO事務局長としての適格性を問題視する声が強まっている。
筆者は中国政府やWHOの対応が透明性に欠けることには同意するものの、感染症の専門家ではないのでWHOの一連の対処策が正しかったかについての言及は控えたいと思う。
そこで、今回の論稿では、トランプ大統領とテドロス事務局長の対立を米中の国連における覇権争いの一環と見なしてその背景を説明していきたい。