引くも地獄、進むも地獄

仮に窮乏生活に転換し、あらゆる防衛手段を講じて恐慌を耐え抜いても、タワマンはその構造上、高額な大規模修繕費用がのしかかってくる。恐慌後、脆弱な経済基盤と机上の返済計画しか持ちえないタワマン入居者が多数破綻する中で、購入時の計画通り管理組合が修繕費を捻出できるかどうかは、実は未知数なのである。すると、一戸当たりの床面積に比例して追加で拠出を迫られる大規模修繕費用が出せないということになる。近代建築技術の粋を集めて造られたタワマンは、図体がでかすぎて修繕しないとたちまち劣化し、廃墟化の道が待っている。

こうなると資産もへったくれもなく、不動産は「負動産」となる。保有しているだけで管理費・修繕費・固定資産税を垂れ流す「負動産」だ。事実、現在ですらバブル期に建造されたリゾート地のタワマンはこのような惨状になりはて、一室15万~80万円というタダ同然の値付けでも買い手がついていない。解体しようにも区分所有者全員の賛同を得ないと実行できず、引くも地獄、進むも地獄の状況が待っている。

こういった不確実要素が多すぎるからこそ、本当の金持ちは新築タワマンに手を出さない。デベロッパーはプロの狼で、購入希望者は知識のない羊である。最初から下町のつましい中古一戸建てを買って、自意識に溺れない生活をしてればこんなことにならなかったのに、と悔やんでも時計の針は元に戻らない。人間の自意識ほど高い代償はない。

【関連記事】
タワマン「年収10倍住宅ローン」の末路
「理論価格がまったく成立しない」マンション大暴落の底なし沼
コロナ禍で遂に迎える本当の地獄…タワマンを購入した共働き夫婦の末路
エリート共働き夫婦の末路「タワマンを買った人は五輪後、本当の地獄を見る」
なぜ、年金受給者はラブホテルに通うのか。「濡れなくても、謳歌できる」その訳。