新型コロナウイルスの影響は、商業施設、住宅といった不動産市場にも大きな影を落としている。不動産コンサルタントの長嶋修氏は「現在のマンション・一戸建て販売については、理論価格がまったく成立しない状況。底なし沼だ」という――。
東京五輪の選手村(手前)と高層マンション(東京都中央区)=2020年2月18日
写真=時事通信フォト
東京五輪の選手村(手前)と高層マンション(東京都中央区)=2020年2月18日

国内不動産市場は「底なし沼」

「国内外からの観光客でホテルや店舗向け需要が高まっていること、それに働き方改革で職場環境を改善しようと、より広いスペースを確保しようとする会社が増えてオフィス需要が高まっている」

先月公表の全国地価公示(1月1日時点)で躍ったこうした文言も、どこかに吹き飛んでしまった。国内不動産市場の現状は「底なし沼」だ。

国内・海外の株価はもちろん経済指標も軒並み大幅悪化。WTO(世界貿易機関)は8日、2020年の世界のモノの貿易量が前年比で最大32%減るとの予測を公表しており、NTTドコモのデータによれば緊急事態宣言後の週末4月12日、東京や大阪などの中心部では、感染拡大前の水準に比して、70%以上人出が減少した。

政府による不要不急の外出自粛要請や緊急事態宣言に加え、3月の外国人新規入国者数は15万2000人と前年同月の250万4000人から9割超減(出入国在留管理庁)。また2月の国際収支統計(速報・財務省)によれば旅行収支の黒字は前年同月比71%減の579億円と、2015年9月以来の低水準。人が動かなければ経済も動かず、不動産市場には大打撃だ。