東大とハーバードに同時合格

【三宅】大学受験では「東大とハーバードに同時合格」という快挙を成し遂げられるわけですが、まず、なぜ東大を受けられたのでしょう?

【ロバートソン】純粋に「東大に行きたい」という思いはまったくありませんでした。わかりやすい動機でいえば、「東大生になればバンドの宣伝になりそうだから」。もっと複雑な動機でいえば、「自分は東大なんかに縛られない」ということを示したかったからだと思います。

【三宅】といいますと?

【ロバートソン】やはりアメリカでディベートの授業を体験した影響が大きいです。私も最初のうちは「こんな議論をしたところで、テストに出るんですか?」という日本人的な態度を取っていましたが、実はディベートのプロセス自体が評価の対象であり、学びの場であるということを少しずつ理解していきました。

一方で、日本に帰って授業中に先生に質問をすると、「授業の邪魔になるから自分で調べろ」と言われてしまう。好奇心や向学心を育む環境ではないですよね。その頃から徐々に「こういう教育が果たして本当の学問なのか」と悩みはじめたのです。

その最たるものが東大受験ですよね。「小手先のゲームに過ぎないのにやたらと競い合っている。なにか違うな」と感じたからこそ、「じゃあ、あっさり受かってやろう」と思ったんです。実際、東大に入っても刺激が足りず、半年もせずに退学してハーバードに変えました。

徴兵から逃れるためにハーバードを受験?

【三宅】ハーバードにはどういう動機で?

【ロバートソン】戦争に行きたくなかったからです(笑)。アメリカ人は18歳の誕生日を迎えると3カ月以内に選抜徴兵登録(セレクティブ・サービス)という制度があり届け出をしないといけません。海外在住なら現地のアメリカ大使館で手続きをするのですが、その通知が届いたタイミングでソ連(現ロシア)のアフガニスタン侵攻があり、徴兵制復活の議論が少しだけ出てきたんです。

【三宅】それは怖い。

【ロバートソン】「浪人しようものなら徴兵されるかもしれない。アメリカのアイビーリーグに行けば徴兵を免れる可能性が高くなるはずだ」と、半ば両親から脅される形で受験しました。それこそ私は白人と東洋人の混血なのでアメリカではマイノリティ扱いされるわけですが、徴兵の順位が上がると怖いので、人種欄には「白人」と書いたくらいです。