「ビジネス文書のやりとりでカチンときた経験はありますか?」。ビジネスマン30人に聞いたところ、一番多かった回答は、名前や社名など固有名詞の間違いだった。「名前の漢字を間違われると、ああ、こちらのことをそれほど真剣には考えていないと考えてしまう」と答えてくれたのは阿部や安倍と間違われるメーカー勤務の安部さん。
手書きの場合、「専門」を「専問」と書くような間違いはよくあったが、パソコンで文書を作るのが主流となった今では、勝手に「専門」と変換されるので漢字の間違いは起きにくくなった。それにワードで書けば、おかしな部分をアンダーラインで注意してくれる機能もある。それでも変換ミスは防げない。それもまさか間違うはずがないと思い込んでいる重要な部分ほど見逃しがちである。
次に多かったのが上から目線を感じる文章と変な日本語。「文章だけでは表情が伝わらないので、偉そうだなと思わせる文章がたまにある」(40代・銀行)。「メールにおかしな日本語があると、そういう使い方もあるのかなと気になる。で、つい検索して調べたりして仕事に集中できない」(40代・流通)。
仕事時間を奪ったのだから、間接的とはいえ失礼なメールだろう。変換ミスを防ぎ、違和感を与えない文章を書くコツはあるのか。国立国語研究所の石黒圭教授に話を伺った。
「常識的には、すぐには送らず間を置いて見直すとか、自分以外の人に読んでもらうことでしょうが、よほど慎重に伝えなければならない文章でもない限り、しませんよね。
まずは自分の文章の癖、例えば『~ので』や『しかし』を多用しがちといった、自分の癖を知ることが大切です。これを意識してコントロールすれば読みにくさはある程度解消できます。
そして大事なのが読む側の立場に立って書くことです。最近、クラウドソーシングの文章を研究対象に調査したのですが、発注側のやって当然という表現をよく見かけました」
ビジネス文書は情報と感情が正確に相手に伝わらなければいけない。ただ、内容も正確だし、表現が丁寧でも、どこか傲慢さを感じる文章というものはある。
「例えば『ライティングがお上手な方には……』。敬語も使っていますし、文法的にも間違っていない。でも、読むほうはなんだかバカにされているような気になるのはなぜでしょう。