新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、外出自粛の呼びかけが広がっている。精神科医の和田秀樹氏は「そうした見解は、政府の専門家会議を根拠にしているが、メンバーのほとんどが感染症の専門家で、他分野の声が届きづらい。感染拡大防止だけを目的にすると、経済苦による自殺などを見落としてしまう。もう少し冷静な対応が必要ではないか」という——。
コロナ対策を指揮する安倍首相を感染症専門家の「言いなり」か
新型コロナウイルスにまつわるパニックのような状態が世界中に広がっている。
現状、日本は欧州などに比べれば感染者数も死者数も少ない。その意味で、政府や国民の「慌て方」はいかがなものかと前回の記事で述べた。感染爆発するかどうかの重大局面であることは承知しているが、やはりもう少し冷静な対応が必要ではないか。
安倍政権の対応を見ていて、もう1点、首をかしげたくなることがある。それは特定分野の専門家の意見に従いすぎていないかということだ。
現在、政府が国民に休校や自粛を呼びかける際に、おおむね新型コロナウイルス感染症対策専門家会議の提言に従っていると言っていいだろう。座長の脇田隆字氏は国立感染症研究所の所長、副座長の尾身茂氏は世界保健機関(WHO)の感染症対策部長を歴任した感染症の大御所だ。そのほか、日本医師会の常任理事や大学の呼吸器内科の教授、弁護士なども入っているが、ほとんどが感染症の専門家である。
彼らが担当することに異論があるというわけではない。ただ注意が必要なのは、「医学」においてはある専門分野の人が勧める治療などが、ほかの医療の専門分野については逆効果となることが少なくないということだ。