なぜ世界で活躍するトップアスリートたちは、記録が伸びないときも強い気持ちで戦えるのか。ビジネスパーソンでも学べるアスリートたちのメンタル術について、スポーツ心理学者が分析した。

一流の選手たちは達成意欲が強い

一流選手に共通するのは、異常なほど達成意欲が強いことだ。並の選手も一流選手に負けないぐらいの努力と練習を積み重ねているのだが、一流は並の選手が「実現できるわけがない」と考える壮大な夢や目標を設定し、その実現に向けて行動し続けている。

渋野日向子氏
渋野日向子氏(AFLO=写真)

私はスポーツと心理学の専門的な知見から、これまで20年近くトップアスリートの言葉を分析してきた。その経験から一流選手と「並の選手」を分けるのは「普段の心のあり方」であるとわかってきた。

例えば2019年の全英女子オープンで日本中の注目を集めたプロゴルファーの渋野日向子選手は、その最終ホールで5メートルのロングパットを見事に決めて優勝を決めた。試合後、彼女は「これを決めたら優勝なのはわかっていたので、どういうガッツポーズをするかを考えていました」と発言した。並のプロゴルファーなら「これを外せばプレーオフになる」というプレッシャーから、慎重な弱いパッティングをしたはずだ。だが渋野選手は外れれば2メートルはオーバーするような強いパットを打ち、一打で決めた。彼女はきっと打つ時点で「自分は優勝する」という肯定的な心構えを持っていたのだろう。