ニューヨーク州立大学のリチャード・フェルソン博士が、高校に入学した2213名の1年生を3年生になるまで追跡調査した。その結果、肯定的な自己評価を持っている生徒ほど大きく学業成績が伸びることがわかった。「自分はできる」「自分には素質がある」というポジティブな信念がある人ほど、努力を厭わずぐんぐん成長することが科学的にも証明されたのだ。

一流を一流たらしめているのはポジティブ思考だけではない。五輪の水泳でメダルが期待される瀬戸大也選手は、「自分には永遠のライバルが国内にいるので。(中略)ライバルがいることで自分のレベルも上がっていく。すぐ近くにライバルがいるからこそ成長できると感じています」と語っている。彼のライバルとは、東京五輪にともに出場する可能性が高い萩野公介選手である。

瀬戸大也氏
瀬戸大也氏(AFLO=写真)

小学3年生の大会で出会ってから、中学2年生まで勝つことができなかった。瀬戸選手は「どうすれば萩野選手に勝てるだろう」と考え、必死で自分に足りないところを鍛えていくことで成長したのだ。ライバルの存在で実力を伸ばしたアスリートには、ほかにも卓球の伊藤美誠選手がいる。彼女も幼い頃からのライバルである平野美宇選手と切磋琢磨することで、世界トップレベルの卓球選手になった。

カリフォルニア州立大学のトーマス・サイ博士は「友人同士はお互いの心理状態が感染し合う」と主張する。つまりポジティブな人間とつきあえば自分もポジティブになるし、逆に落ち込んでいる友人と接していると、自分も落ち込んでしまうのだ。また感情だけでなくスキルも感染する。だからこそ上を目指すなら、つきあう人間はよく選び、前向きに努力を続ける人を友人にすべきなのだ。

スランプのときにこそ絶好調

五輪競技とメジャーリーグの開催日程が重なるため、東京五輪への出場可能性は低いが、スランプの乗り越え方で参考になるのが、打者と投手の「二刀流」を武器に米国で活躍する大谷翔平選手だ。大谷選手はスランプのとき「書籍・映画・対話……どこかにヒントはないか。そうやってメンタルを切り替えるためのきっかけを常に求めている」と語っている。単に気晴らしのために本や映画に時間を投じているのではない。

大谷翔平氏
大谷翔平氏(AFLO=写真)

東京五輪開会式で聖火ランナーが期待されるイチローさんも、「スランプのときにこそ絶好調」という名言を残したが、大谷選手も必死に打開のヒントをあらゆる場で探しているのである。2人に共通するのが、「スランプは今の自分に必要な何かを教えてくれるきっかけ」と考えていることだ。前述の競泳・瀬戸大也選手も同じ考えを持っており、ライバルを打ち負かせないときは、その理由を突き詰めようと考える。うまくいかないときこそ平常心を維持し、事実をありのまま受け止め、改善策を徹底的に考えることが、一流に共通するスランプの乗り越え方なのだ。