長身痩躯のモンゴル少年が、異国の異なる文化の只中で戸惑いつつ、その「国技」の世界の頂点に。長くその座に君臨し、ついにはその地に骨を埋めると決めるに至ったその心境をきいてみた。
常に崖っぷちにいる気持ちだった
――日本国籍の取得、おめでとうございます。
ありがとうございます。本当に嬉しいことでした。
――横綱にとって大きな決断だったのではないですか。
モンゴル国籍を失うことにもなったわけですけど、それよりも日本に帰化したいという気持ちのほうが強かったです。
――日本人しか得られない年寄名跡ですが、白鵬関については、実績面でも存在感でも文句のつけようがない、国籍はもういいんじゃないか、という声も大きかったですよね。
正直なところ、日本国籍のない状態で土俵に上がるのは不安でした。もし大怪我をしたら引退です。わたしにとって、それは相撲協会との縁が切れること。弟子(炎鵬、石浦などの内弟子)を預かっているので、引退後は相撲協会に残って彼らを指導しなくてはいけませんから、日本国籍を得られないと、彼らの信頼を裏切ることにもなります。