ソレイマニ殺害は想定外に決定された
2020年の国際社会は、アメリカによるイランの要人殺害という衝撃で幕を開けた。20年1月3日、米軍の無人機がイラクの首都バグダッドにある国際空港を襲撃、イラン革命防衛隊のカセム・ソレイマニ司令官一行を殺害したのだ。
イランには国軍(正規軍)とは別に国家安全保障を担う「革命防衛隊」という宗教指導者直属の軍事組織があって、独自の陸、海、空軍や情報部隊、特殊部隊などを有している。暗殺されたソレイマニ司令官は、革命防衛隊の中でも精鋭の特殊部隊である「コッズ部隊」を率いて中東各国で秘密工作を指揮してきたと言われている。
敵国に対して高度な破壊工作を行ったり、イランが支援するイスラム教シーア派系の武装組織や民兵に軍事訓練を施すのが、コッズ部隊の主任務だ。隣国のイラクでは米軍施設や大使館などを狙ったシーア派系武装組織によるテロ攻撃が繰り返されてきたが、この武装組織を支援していたのがコッズ部隊であり、ソレイマニ司令官はイラクでの支配力を強めていた。
「革命防衛隊とソレイマニが指揮していた冷酷なコッズ部隊は長年、米国の軍人と市民を何百人も負傷させ、殺害してきた」とトランプ大統領は言う。ソレイマニ司令官の殺害を決断した理由についても「米国人の生命を守るために必要だった」と主張した。