新型コロナで明らかになった新しい経済学

今から20年ほど前、私は『The Invisible Continent(見えない大陸)』(2000年)という本(邦題『新・資本論』、東洋経済新報社)を出版して、20世紀の経済と21世紀の経済の根本的な違いについて書き著した。

緊急事態宣言を発令する安倍晋三首相(2020年4月7日)。
緊急事態宣言を発令する安倍晋三首相(2020年4月7日)。(代表撮影/ロイター/アフロ=写真)

20世紀の経済というのは基本、目に見えるリアルな実体経済である。「国家」という閉ざされた空間で、質量保存の法則のように、エネルギーの総質量が変わらない経済を金利とマネタリーベース(通貨供給量)でコントロールしようというのが、経済学者ケインズおよびその弟子たちが営々と築き上げてきた20世紀の経済学だった。

しかし、21世紀の経済はリアルの実体経済に加えて、ボーダレス経済、サイバー経済、マルチプル(倍率)経済という4つの経済要素で構成されている。それらが相互に作用し、混然一体となった「見えない(経済)新大陸」においては、それまでの経済原則や企業戦略が通用しない事象が次々と起こる――。

The Invisible Continent』の邦題を『新・資本論』としたのは、20世紀のケインズ学的資本論に対して、「21世紀は大前流資本論である」という意味合いを込めたつもりだったが、何が「新」なのかが明確に伝わらず、世界的には読まれたのだが、日本での反応はいまひとつだった。それでも、この20年間に起きた経済事象のほとんどすべてが本書で説明できるし、『新・資本論』の世界観に世の中の理解がようやく追い付いてきた実感もある。