罵り合ってもすぐ仲良くなる

ソフトブレーン マネージメント・アドバイザー <strong>宋 文洲</strong>●1963年、中国・山東省生まれ。北海道大学大学院博士課程修了。92年、ソフトブレーン創業。2006年、同社取締役辞任。
ソフトブレーン マネージメント・アドバイザー
宋 文洲

1963年、中国・山東省生まれ。北海道大学大学院博士課程修了。92年、ソフトブレーン創業。2006年、同社取締役辞任。

留学生として来た日本に25年いて、最近北京に拠点を移しました。日本と中国の間を毎月仕事で往復するので、日本に来るたびに、週刊誌をまとめて何種類も買うことにしています。

でも、今の日本が抱えている問題は沢山あるのに、尖閣列島での問題が騒がれると、なぜか皆そのことばかりを取り上げる。どれを読んでも、13億人以上いる中国人がみんな怒っているみたいに書いてありますね。

でも、実態は全然違う。中国で起きた反日運動が、日本のテレビ番組でよく取り上げられていたとき、中国にいる親戚や友人に電話をすると、「いったい何の話?」みたいな感じ。日本で大騒ぎになっていることさえ知らない。今回も同じで、一部の人が騒ぐのを大袈裟に扱いすぎるんですよ。

だいたい、「国家」としての中国と、個々の「人間」としての中国は関係がないんです。中国人は、“カタマリ”としての中国は意識しません。世界中にいる華僑と呼ばれる人々だって、別に国の意思で活動しているわけじゃない。多くは国を追われた人たちです。

単一民族国家と多民族国家の違いもある。「在日韓国人・朝鮮人やアイヌ人だっているじゃないか」と反論する人もいるかもしれないけど、統計的にみれば微々たるもの。日本は単一民族といっていい。でも、中国は正反対。もともと多くの民族がいるし、統計自体もいい加減。自分で漢民族といっていた人の先祖が、実はモンゴル人や満州人だったりすることはザラです。

いろいろな地方、たとえば河北省と山東省、雲南省と福建省、内モンゴルとチベットは、それぞれよその国の人といえるぐらい違います。こういう人たちを同じ中国人だからと一括りにするのは、明らかに無理があります。