8割は中国に対して「親しみを感じない」
右傾化、してますか?
「右傾化している」とメディアで評論される機会が増えたのは間違いありませんが、一人ひとりを指差して「あなた、右傾化していますね?」と問われれば、「いいえ、私は違いますよ」と答える人は多いでしょう。
例えば、2014年2月の都知事選。巷では、その経歴や発言内容から「ネトウヨ(ネット右翼)候補」と揶揄されもした元航空自衛隊幕僚長の田母神俊雄氏が、61万票を獲得し4位となりました。出口調査では若い世代からの得票が多かったことから、「若い世代の右傾化が深刻だ」という一見もっともらしい選挙分析が出ました。実際には20代、30代の投票率は低く、彼らの得票を最も集めたのは当選した舛添要一氏であり、むしろ全体の傾向としては「田母神氏の主張した過激な極右的政策は必ずしも国民に浸透しておらず、当落線上ですらない61万票程度しか確保できなかった」という内容になるはずなのですが。
しかし、日本の社会風土に閉鎖的な側面を感じるという論調は、理解もできます。政府は少子高齢化による労働力不足への対策として、かねてより移民政策を検討していますが、04年の内閣府の世論調査では「(外国人労働者の)受入れについて積極的に考えていく」と回答したのは全体の15%程度でした(※1)。アジア圏においては、2013年11月に内閣府が発表した調査で、中国に対して「親しみを感じない」とする層はついに80%を突破。韓国に対しても58%と6割に迫る勢いです。
対中国、対韓国の感情悪化が、右傾化という印象に結びついているとも言えます。また、脱米・親中韓という左派的な傾向があった民主党政権が成果を出せずに瓦解したことにより、その反動として、自民党・安倍晋三政権のやや右派的な言動に期待が集まって、いまなお50%後半の支持率を集めていることが、「日本社会が右寄りに舵を切っている」という議論が持て囃される背景となっています。