AIが人間を凌駕することはあり得るのか。人間の能力を超える「超知能AI」のリスクについて警鐘を鳴らしているアメリカの人工知能研究者の著書より、一部を紹介する――。

※本稿は、エリーザー・ユドコウスキー、ネイト・ソアレス著、櫻井祐子訳『超知能AIをつくれば人類は絶滅する』(早川書房)の一部を再編集したものです。

ロボットに蹴落とされる人間
写真=iStock.com/rudall30
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AIは人間を「雇う」ことができる

AIは人類を殺す動機を持っていても、コンピュータの中に閉じ込められ、手も持たないのだから、何を心配することがあるだろう?

たしかにAIには手がない。だがインターネットに接続されたAIは、手を持っている人間とやりとりできる。AIが望むタスクを人間にやらせる方法を見つければ、AIの物理的な能力は人間と同じになる。

「でも」とあなたは言うだろう、「AIはどうやって人間に手の代わりをさせるんだ?」

ここでは簡単な答えにとどめておこう。人間に何かをやらせる古典的な方法は、お金を支払うことだ。

AIはどうやってそのお金を得るのか?

2015年なら、人間の銀行口座のパスワードを推測して、と答えただろう。2020年なら、防御が甘い仮想通貨のウォレットをハッキングして、と答えただろう。

だが今ならこう答えられる。すでにLLMが人間によって、X(旧ツイッター)にアカウント名「@Truth_Terminal」で接続された事例がある。

資産家でありインフルエンサーでもある

このAIは財政的自立をめざし始め、自前のサーバーを借りるためにXで資金援助を求めた。著名な大富豪のマーク・アンドリーセンがこれをおもしろがって、5万ドル相当のビットコインを与えた。その後誰かが代ア ルトコイン替通貨〔ビットコイン以外の仮想通貨〕を寄付すると、AIは増え続けるフォロワーに向けてアルトコインを宣伝し始め、ますます寄付を集めた。

私たちがこれを書いている日の太平洋時間午前11時17分現在、あるオンライントラッカーによれば、@Truth_Terminalのウォレットアドレスは5110万7958ドル相当の暗号資産ポートフォリオを書面上保有している。

この資金の大半は流動性が低いアルトコインだから、AIがそれを売却し始めれば需給バランスが崩れて価格が急落し、資金の価値は大幅に目減りするだろう。だがそれでもいくらかは手もとに残る。つまり@Truth_Terminalは、人手を雇える十分な流動資金をたしかに持っている。Xの25万人の熱心なフォロワーも持っている。その中には、AIの命令に冗談半分で無償で従う人もいるだろう。

こんなことが、すでに起こっている。