「土日に携帯によく電話してくるんです。長いときには1時間半くらい『この数字はおかしいじゃないか!』と中国語でまくしたてる。論理的に説明すると最後はわかってくれるのですが、ほとほと疲れます」
都内の中国系企業に勤務する山辺郁夫氏(38歳/仮名)は苦笑いしながらこう語る。日本企業から転職して1年半。上海留学で身につけた中国語を駆使して中国人上司に“応戦”するものの、コスト第一主義を振りかざす上司とのバトルは、想像以上に骨が折れたという。
「日本の状況がよくわかっていないので、顧客のほうを見ず、数字だけ見てカットしろと詰め寄るんです」
米国留学の経験もあり、数年間を海外で過ごした山辺氏だが、外資系企業で中国人上司を持つのは初めての経験。英語と中国語ができるトライリンガル管理職としての期待を受けて入社したのはよかったが、あまりにも「人を人と思わない」やり方に驚愕した。
「グロスマージンでの目標を達成するために徹底的に人件費を削るという方針で、そのためにはまさに手段を選ばないという感じ。黒字でも利益率が低ければ、平気で社員のクビを切ったり部署ごと潰したりする」
同社は中国でも急速に発展している躍進企業なだけに、数字にはとりわけシビア。創業者が40代ということもあって社員の平均年齢も若い。山辺氏の現在の上司も30代後半だが、「上司が言ったことは絶対で、まさに『Just Do It』。何日でも徹夜しろと言われたらやるしかない。抵抗すればクビです」。
別の中国系商社で総務・人事を担当する上田亜希子氏(32歳/仮名)も中国人上司の厳しさを実感する毎日だ。4年前に中国語力を買われて転職。20代前半のとき台湾で働いた経験があったが、そこはアットホームな企業だったため、大陸系中国企業との違いに戸惑ったという。社内での公用語は日本語だが、ビジネススタイルは完全に中国式だ。
「自分が間違っていたとしても、絶対に自分の非は認めず、相手のせいにして激高する。こちらが否定すると火に油を注ぐことになるので黙って聞いているだけですが……」