歴史哲学や比較文化的視点から日本史を研究する武光誠・明治学院大学教授に「職場と県民性」についてお話を伺った。
「人間の気質は、世代や時代背景などにも影響されていますが、そのなかで県民気質に着目するのも面白いかもしれません。県民気質をつくり出しているのは、気候、産業、交通路の違いといった地理的要素と、縄文文化圏・弥生文化圏の違い、江戸時代の藩の違い、戦国時代までの支配者の違いといった歴史的要素です。気候ひとつ取っても積雪の厳しい地域は粘り強い気質が、自然の恵みが豊かな地域は物事にこだわらない豪放な気質を持つ人がつくられやすいといわれる」
さらに、郷土の偉人の影響が強い地域もある。
「明治維新の西郷隆盛や坂本龍馬のような偉人を輩出する地域では、憧れの念から影響を受けている人もいる。例えば鹿児島県では薩摩人独特の気質を強く持つ男性を『ぼっけもん』と呼びます。西郷隆盛のようなどっしり頼られる人間に憧れを持つ人もいる。
土佐(高知県)気質の強い人には、坂本龍馬のような豪快な生き方を好む者も多い。酒と議論が大好きな、一本気で大きな夢を持っています。長州(山口県)気質の人で、勉強熱心で理屈っぽい人もいます」
つまり、鹿児島気質の強い上司には、小さいことにこだわらず、肝の据わった自分をアピールすれば評価してもらえるし、何事も1人で決めて突っ走るようなタイプはトラブルメーカーになる心配がありそうだが、土佐気質の強い上司であれば、逆にそれを奨励して助けてくれるかもしれない。筋の通らない行動を取れば、山口県出身の上司から大目玉を食らう。