第1回~第3回では、人を動かすには相手を「聞く気にさせる」必要があることをお話ししました。まずは、「心の門」を開いてもらうことが第一ステップです。
相手が「心の門」を開いてくれたら、いよいよ第二ステップ、「意味を伝えること」に進みます。意味を伝えるためのキーワードが「具体化」です。
丁寧に話したからといって伝わりやすくはならない
みなさんが、誰かにどこかへ行くように指示を出す場合を考えてみてください。相手は誰でも構いません。たとえば行く先を東京駅だとして、指示をするシーンを思い浮かべてみてください。どのように指示しますか?
「東京駅へ行ってこい」
だめです。
「東京駅へ行ってきてください」
まだだめです。
「東京駅へ行って来てくれませんか?」
全然だめです。
ていねいに話したからといって、意味が伝わるわけではありません。
私なら、このように言うでしょう。
「このビルを出て左に曲がると、目の前に大通りが出てきます。その道を道なりに進むと、○○駅の○番出口があるので、そこから地下へ降りてください。そうすると駅の改札口があり、そこから○○線の○○駅行きの電車に乗って、3つ目の○○駅で降りて、JR山手線に乗り換えれば次の駅が東京駅です」と言います(これを、あなたの最寄の駅で考えてみてください)。
その人が急いでいるようであれば、このように付け足します。
「乗り換えが面倒だったら、大通りを左に曲がって道なりに行くと交差点があるので、そこを右折してください。まっすぐ進むと10分くらいでJRの○○駅に着くので、そこで東京駅行きに乗れば、一本で着きます」。
目的は東京駅に行ってもらうことです。目的とは達成してほしい「意味」です。しかし、その意味だけを伝えても、相手はどうしたらいいか分からないのです。
そこで、具体化して道筋をつけてあげます。最終的な目的だけを言うのではなく、そこに至るまでのプロセスを分解してあげるのです。そうすると、相手も「意味」を理解し、そのとおりに動いてくれるようになります。