理屈では人は動かない

コミュニケーションには、「意味」と「意識」の2つの要素があります。

たとえば「昼までにコピーを100枚とってくれ」というのは、人に自分がしてほしいことの「意味」を伝えています。つまり、相手に「意味」を伝えて、動いてもらおうとしているわけです。

しかし、相手が意味を正確に理解したからといって、その通りに動いてくれるかというと、そうとは限りません。「意識の共有」がベースにある相手だと、「意味」もスムーズに伝わります。

頭の良い人が注意しなければならないのはここです。頭の良い人は、とかく、「理屈で人は動く」と考えがちです。しかし、理屈だけでは人は動かないのです。いやな人に言われたことはやりたくないのです。

人に言ったことを素直に分かってもらい、動いてもらうには、「意識」の共有が必要です。そのためには、日頃からの付き合いや、「人間力」というものが必要になるのです。

インターネットや、イントラネットの普及で、今、私たちは1日に何十通も、多い人は何百通もメールを受け取ります。関係ないCCメールも山ほど送られてきます。送るほうは、「一応、あの部署にも知らせておこう」とか、「あとで聞いていないと言われると面倒だから」といった理由で送るのでしょうが、受け取る側はそのメールの処理に忙殺されます。メールは意味を伝えるのに便利な道具ですが、「意味」の情報が大量に押し寄せた結果、コミュニケーションが良くなるどころか、コミュニケーションが悪くなっている会社が大半です。

メールより電話、電話より直接会う

皆さんは、知らない人やそれほど親しくない人から、長文のメールが来たらどうしますか。私なら、まともには読みません。忙しい中、そんな長い文章を読んで、返事をする時間がもったいないからです。もともと意識の共有のない、言い方を換えれば、心理バリアが高い状態では、相手に受け入れる心理体制が整っていないので、メールで伝えたい意味が伝わらないのです。では、「意識」を共有するにはどうしたらいいのでしょうか。答えは簡単です。

「メールよりも電話、電話よりも会いに行く」です。特に、よく知らない人ほど、会いに行ったほうが良いのです。

意識の共有ができた相手だと、短いメールでも、動いてくれます。

※この連載では、プレジデント社の新刊『「超具体化」コミュニケーション実践講座』(2月20日発売)のエッセンスを<全7回>でお届けします。

(撮影=小倉和徳)