「がんばれ」ではなく「朝から3件まわれ」と言う

日常でよく使われる、「がんばれ」という言葉。この「がんばれ」という言葉はまさに「具体化」の対極にある言葉です。

朝、上司から「○○さん、今日がんばれよ」と言われたら、皆さんはどう思うでしょうか?単に、励まされているだけなのか、何か指示されているのか、これだとさっぱりわかりませんね。
言われたほうは「何をがんばればばいいのかな」と思ってしまいます。

なぜこうなるのか。それは、「がんばれ」という言葉には、具体性がないからです。

そこで、たとえば「朝から3件営業に行ってきなさい」と具体的に行動を示してあげる。さらに具体化して「朝からA社、B社、C社に営業に行ってきなさい」と言ってもいいでしょう。こうすることで、相手も「どこに行ったらいいのだろう」と迷うことなく、行動できるのです。

会社の管理職の人たちが、「最近の若いのは指示待ちばかりだ。一から十まで言ってやらないと何もできない」などと愚痴をこぼしているのをよく耳にします。彼らは「がんばれよ」と言っても動かない部下に苛立ちを感じているのです。この人たちが不幸なのは、「がんばれよ」の一言で、相手は動くと思い込んでいるところです。

部下のほうも、実は分かっていないのに、「それではがんばります」と調子を合わせてしまうと、2人の間ではあたかも会話が成立したかのような幻想が共有されます。こうなると厄介です。部下はやる気はあるけれど、空回りし、上司も部下が結果を出さないので不満が募るという、悪循環に陥ります。

※この連載では、プレジデント社の新刊『「超具体化」コミュニケーション実践講座』(2月20日発売)のエッセンスを<全7回>でお届けします。

(撮影=小倉和徳)