うつ病で長年薬を飲み続けているという人は多い。だがそれで症状はよくなるのか。夫婦ともにうつの経験がある砂田康雄さんとくにえさんは、「うつ卒倶楽部」を主宰し、うつ病で悩む人の回復をサポートしている。40年間うつ病に苦しんだが、生活習慣の改善、考え方の見直しと減薬で症状が消えたという70代男性の事例を紹介しよう——。(後編)
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「入院させて隔離するか、24時間監視し続けるしかない」

「うつ卒倶楽部」に連絡をくださるのは、医師にうつと診断されて治療を続けている人がほとんどです。しかし医師が処方した薬を何カ月、何年服用しても回復の兆しが見られない。うつに苦しむ本人はもちろんご家族も、いまの状況から抜け出したいけれど、もう何をしていいのか分からない。私にはその気持ちが痛いほど分かります。

うつ症状がひどかった時期、私は強い自殺願望を持っていました。妻が、医師に相談したところ「入院させて隔離するか、あなたが24時間監視し続けるしかない。それができないなら、覚悟するしかありません」と言われました。妻は、もしかしたらと不安を抱えながら毎日帰宅していたそうです。うつは本人だけでなく、家族も巻き込む病気なのです。

クライアントのなかで、もっとも長い期間、うつの症状に苦しんできた方は70代のBさんでした。少しよくなっては、またつらくなる。そんなことを繰り返し、40年もの歳月が流れていました。うつの再発は8回にも及んだと言います。

ご本人も奥さまも、もう何をすればいいか分からない。そこで、関西から「うつ卒倶楽部」に電話してくださったのです。

ほかのクライアントと同様、Bさんのサポートもまずはしっかりと話を聞くところからはじめました。Bさんご本人や奥さまの話からうつの症状や原因、ご本人の性格、生活習慣などを把握していくなかで、回復に必要なアドバイスをしていきました。