信号の存在が、事故を誘発する!?

2019年5月、滋賀県大津市で起きた交通事故が記憶に新しい。県道を右折しようとした車と直進の対向車が接触。避けようとした対向車が信号待ちの保育園児の列に突っ込み、園児2人が死亡、1人の重体を含む14人が重軽傷を負った。

※写真はイメージです(写真=iStock.com/Tony Studio)

「起こるべくして起きた事故。現場はわれわれサイクリストの間でも、危険な道として以前から知られていました」

こう語るのは、NPO法人自転車活用推進研究会理事長の小林成基氏だ。

「事故のあった県道は琵琶湖に沿って延びていて、車はついスピードを出してしまう。一方、県道は近くを走る国道のバイパスとして使われ、普段から交通量が多く、現場の丁字路も渋滞ポイントになっています。スピードが出やすく渋滞するとなれば、事故が起きるのは当たり前です」

交通量の多い交差点には、事故を防ぐために信号機が設置されていることが多い。現場の丁字路にも、右折のための矢印信号がついていた。しかし、小林氏は「信号が事故を誘発する面もある」という。

「一般的に矢印信号が青になるのは数秒間。そのため渋滞しやすい丁字路では、矢印信号が青でなくても無理して右折する車が目立ちます。安全確認できれば右折も可能ですが、実際には慌てて右折するため、事故につながりやすい」

スピードを出せない道路に

さらに怖いのは、信号現示(点灯)のルールが信号機によって異なることだ。現示の意味は、道路交通法施行令第2条で定められている。たとえば赤が停止であることは、全国どこでも同じだ。しかし、現示の時間やサイクル、他の信号機との現示の組み合わせは各都道府県の公安委員会が信号機ごとに判断しており、一律ではない。

「矢印信号が青なら、通常、対向車線の信号機は赤です。しかし、交差点によっては両方が青で現示される場所もあります。特殊なローカルルールが存在するので、信号機を過信するのは危険です」

信号機が頼りにならないとしたら、ほかにどのような方法が考えられるのか。

ヒントになるのは、スピードと人身事故致死率の関係だ。WHOのリポートによると、時速60キロで起きた人身事故は致死率がほぼ100%で、時速50キロでは約85%。しかし、時速30キロ未満だと5~10%未満と大きく下がる(図版参照)。

「事故が起きても最悪の事態に至らないよう、そもそもスピードを出せないようにすればいいのです。ヨーロッパはその方向に舵を切り、都市内は時速制限30キロ以下が普通。ルールで縛るだけでなく、ラウンドアバウト(環状交差点)、シケイン(鋭角なS字コーナー)、ハンプ(突起)など道路にも工夫をして、物理的にスピードを出せないようにしています」

高齢ドライバーによる交通事故も目立つ今、人は運転でミスを犯すという前提に立って、交通施策をいま一度見直すべきだろう。

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(答えていただいた人=NPO法人自転車活用推進研究会理事長 小林成基 図版作成=大橋昭一 写真=iStock.com)