水族館の入場券をコンビニで買って、転売
罪状は、「詐欺等」。
40代後半の男性被告人は、犯行当時、無職で窃盗歴も多数。おそらく単純な事件で、巧妙な手口に感心させられることもないだろう。席を立たなかったのは、同時間帯に見たい裁判がないという消極的な理由にすぎなかった。
検察官が起訴状を読み上げる。
「被告人は不正に入手したクレジットカードを使い、コンビニで入場券95枚、20万7000円の購入を申し込み、だまし取った。また、(同じく不正に入手した)クレジットカードを使い別のコンビニへ行き、店員のA・サポス(仮名)に対し入場券購入を申し出て、54枚11万1800円分を購入した」
最初に購入した入場券は「アクアパーク品川」(東京・品川区にある水族館を核とする屋内型アミューズメント施設)などのもので、購入後は金券ショップに転売して現金化していたという。買い取り額は定価の35~40%くらいだというから、8万円前後だ。
そのあとに購入した入場券54枚(11万1800円分)は、50枚分を換金した(約4万2000円)。ほかにも同じ手口で44枚の入場券を3万7600円で売却しており、そうした収入でネットカフェを転々としながら生活していたという。
なぜ、外国人コンビニ店員のレジに並んだのか
<他人のクレジットカードを使ってコンビニで入場券購入+金券ショップで売却>は被告人なりに考え抜いた必勝詐欺パターンだったのだ。さらに、捕まらないようにするため悪知恵も働かせていた。
それは、外国人スタッフの多いコンビニを狙うことである。
カードで購入する際に必要となる漢字の署名が名義人の書き方と一緒でなくてもバレにくいと考えたのだが、それがうまくいった。外国人スタッフを責めるのがナンセンスなのは、自分が英語圏のコンビニでアルバイトすることを想像したら納得できるだろう。
購入はコンビニ内にあるマルチメディア端末で申し込み、店員との接触は精算時のみ。外国人のアルバイト店員なら日本のオヤジが何を買うかに興味を持たないとの読みもあった。いつも入場券だったのは、持ち運びしやすくて高額で換金できるから。金券ショップでは拾った保険証を身分証として提示し、身元がバレるのを防いでいた。シンプルな犯罪だけれど、うまくやれば成功率が高いのである。