※本稿は、瀧澤信秋『辛口評論家、星野リゾートに泊まってみた』(光文社新書)の一部を再編集したものです。
イノベーションを担う運営会社があったほうが良い
――星野リゾートの運営会社としての強さをどう分析されますか?
【星野】ホテルが足りない→多すぎた→足りない、を繰り返して成長するのがホテル業界ですが、しっかり業績を残し外資と戦えなければ世界へ出ていくことはできません。旅行者は増えていますし、需要もある中で、稼働率や収益率だけでは差が出ません。
投資家やオーナーの最大の関心は、売上ではなくどれだけ利益率が高められるかです。特にリーマンショック以降、違った手法を提案し運営できる運営会社が残っています。他社と同じ利益率なら運営会社に出ていってくれというシビアな時代です。
ポジショニングは重要で、立ち位置を明確にすることが大切です。私たちは需要のないところに建設されたホテルをどう再生するか考えながら運営をしてまいりました。まずは需要を作り出すことに、取り組まなければなりませんでした。
悪しき伝統は淘汰されるということ。学べるところは全部学ぶこと、壊すべき伝統は壊さないと生き残っていける時代ではありません。イノベーションを担う運営会社があったほうが良いし、壊していると指摘されることは嫌ではありません。
ブランドには明確な差があるべき
――まだまだ新たなコンセプトのホテルは増えていきますか?
【星野】日本のホテル・宿泊業界は変わっていくのでしょうか? と、よく聞かれますが、正直なところ私もわかりません。逆に教えてほしいくらいです(笑)。ホテルを作りすぎという話もあったり、まだまだ大丈夫みたいな話もあったり。瀧澤さんのほうがよくご存じだと思いますが、どんなにホテルが増えても、ホテルは増え続けていくのです。投資家がいますから。投資家は必ず新しいホテルを作り続けていくと思います。
新しいホテルを作り続ける時には、必ず自分が新しく建てるホテルが有利になるように、新しいコンセプトを探し続けます。ですから、この動きは永遠に続いていきます。ちょっと当たるコンセプトが出ると、それを真似する人が出てくるということを繰り返していくのです。
――「星のや」「界」といったような星野ブランドは増えていくのですか?
【星野】ブランドには明確な差があるべきだと思っており、大手の外資のホテルチェーンはブランドの差がないことで混乱を与えていると思っています。多くのブランドを作ってしまう理由は、実はオーナーニーズ(所有者の希望するスタイル)で作ってしまっていて、マーケットセグメンテーション(利用者が望むスタイル)から作っているわけではありません。