水道法が改正された目的とは

2018年12月6日、国会で水道法改正案が可決された。一部のメディアで「水道が民営化される」と報じられ、「水道料金が上がるのではないか」「サービスが低下するのではないか」と取り沙汰されている。

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しかし、「民営化」というのは正確な表現ではない。今回の法改正の大きなポイントは、「広域化」「官民連携」「資産管理」の3点であった。その背景から説明しよう。

資産規模が約40兆円に上る日本の水道施設は、高度経済成長期に建設されたものが多く、老朽化によって全国各地で漏水被害などの問題が発生している。こうした施設の更新などには、膨大な費用と時間を要する。

その一方、節水型機器の普及や人口減少が影響し、水道の給水量は2000年頃から全国的に減少傾向にある。すでに全国の水道事業体の約3分の1で「供給単価」が「給水原価」を割り込む「原価割れ」が生じている。今後さらに減る給水人口で、施設更新や耐震化などの費用を負担するとなれば、水道料金は確実に値上げせざるをえないだろう。小規模な市町村や人口減少が著しい地域において、水道事業の問題は特に深刻であり、事業形態の見直しは待ったなしの状況だ。そのような背景から水道の基盤強化を図ることが、今回の水道法改正では大きな目的の1つだった。「資産管理」を実施するため、水道施設台帳の作成・保管が事業者に義務付けられたのもその一環である。

打開策として、施設の統廃合やダウンサイジングとともに、以前から注目されてきたのが、「広域化の推進」だった。現在、全国の水道事業者は約2000が存在している。それが近隣自治体と連携して設備や人材を共有すれば、スケールメリットや関連事務の効率化が見込める。しかし当初の期待ほど、広域連携は進んでいない。原因の1つに、地域間の料金格差がある。もともと水源がよいなどの理由で水道料金が安い地域は、事業統合によって値上がりすることになり、そちら側の市町村は反対する。設備の格差も同様で、浄水場などの設備が新しい地域と古い地域が統合すれば、前者が後者を支援する形になる。それまで水道料金や税金で設備更新を負担してきた市町村の住民からは、賛成が得にくい。

こうした問題に対処するため、今回の法改正では、都道府県に調整役としての明確な役割を持たせた。これによって広域化がスムーズに進み、地方の事業基盤の強化が期待できる。