新制度は歴史的な転換点になる
2018年12月8日、「改正出入国管理法」が参院本会議で可決、成立した。
これまでも日本は、通訳やエンジニアなどの高度外国人材は積極的に受け入れてきた。しかし、いわゆる単純労働力としての外国人受け入れには極めて消極的で、制度が整備されてこなかった。その抜け道のひとつが、外国人技能実習制度である。途上国人材に日本の技術を習得させ、母国発展に寄与させるという「国際協力」が建前でありながら、中身は人手不足の産業で労働者を受け入れるために機能してきた。制度上の大きな矛盾もある。そのひとつが国際協力を前提としているため、すべての実習生が定住できず、帰国してしまうことだ。すると最長5年間という期限の中で、実習生は多く稼ぐこと、雇用者は安く働かせることを刹那的に考えるようになる。また働き先の会社と合わなかったとしても、転職は認められない。もはや国際協力ではなく、外国人搾取である。
今回の法案で議論されたのは、これまでの技能実習生にくわえた、新しい在留資格だ。一定の技能を有する「特定技能1号」は在留期間が最長5年。受け入れ分野は、建設、介護、農業など14業種が検討され、転職も可能とされている。さらに熟練技能を有する「特定技能2号」になると、在留期間が更新でき、家族を母国から呼び寄せることもできる。これまで単純労働力としての外国人労働者受け入れに蓋をしてきたため、技能実習生と出稼ぎ目的の留学生が、歪んだ形で増えてきてしまった。それを就労目的で受け入れる方向は正しいし、歴史的な転換点になるだろう。外国人労働者にとっては生活基盤ができ、日本にとっては長期的視野で人手不足解消の望みとなるはずだ。
その受け入れ規模について、政府は「5年間で最大34万5150人」の数字を挙げている。単純計算して年間約7万人。「多い」「少ない」という議論があるが、その前に新しい制度ができたら技能実習制度を廃止するか大幅縮小するべきであろう。同制度は人数制限がないため、制度が並存したら、片方で蓋をしても片方では底が抜けているような状態になる。現在、年間5万人程度の実習生が来日している。技能実習の代わりに、新制度で彼らを就労目的として認めて受け入れれば、数の上では大きな問題はないのではないか。
そして、安倍首相は議論が深まらないまま、2019年4月の導入を目指した。理由は「人手不足が深刻で、早急に制度を実施する必要がある」から。しかし短期の人手不足より、むしろ人口減少を想定した対策として考えるべきだ。