1兆円を超えるアップルへの追加徴税
最近、先進各国の政治課題の1つになっているのが、「GAFA」をはじめとするグローバルなデジタル企業への課税だ。自国の市場から巨額の利益を上げられているにもかかわらず、各国の税務当局はこれらの企業から思うように税を徴収できていない。欧州連合(EU)が発表した資料によると、従来型産業の企業は平均で利益の23.2%を税として納めているのに対し、デジタル企業はその半分以下の9.5%しか納税していないのだ。
2018年2月、アイルランドの税務当局は、同国に2つの子会社を置くアップルに対し、130億ユーロ(約1.7兆円)の追加徴税の支払いを求めた。これは日本の全相続税収約2兆円に迫る莫大な金額だ。アイルランドは長年にわたり、アップルに大幅な税の優遇措置を行っていた。EUの欧州委員会はこれを「違法な補助金」と認定。アイルランド政府に税の追徴を求めた。
海外市場だけでなく、本社所在地でも事情は変わらない。18年に売上高2392億ドル、純利益112億ドルを叩き出したアマゾンは、何らかの税務戦略により、17年に引き続き米連邦税を1セントも払わないことが報じられている。
なぜこんな事態が生じているのか。おもな理由は2つある。
まず、租税条約をはじめとする現行の国際的な課税ルールが、グローバルなデジタル企業の活動に対応しきれていないこと。たとえば、ホテル予約サイトやオンラインゲームなどのビジネスは、サーバーや支店などの物理的拠点をどこか都合のいい国に置けば、そこから国境を超えて顧客を開拓できる。一方、現行の課税ルールは、自国内での支店などの拠点の存在を課税の前提としているため、そうした事業が自国の市場で上げている利益に課税する根拠をもたない。
もう1つの要因は、グローバル展開するデジタル企業の多くが、タックスヘイブンを利用した租税回避策を積極的に行っていることだ。デジタルビジネスの儲けでは、商標権などの知的財産権が果たす役割が大きいが、これを税率の低いアイルランドやルクセンブルクに置いた子会社(ペーパーカンパニーの場合もある)が保有する形にし、海外市場での売上利益をその子会社にライセンス料として支払う会計処理によって、「合法的」に租税回避を行うという手法である。