グーグル、アップルが使っていたことで有名なのが、アイルランドに2つの子会社を置き、さらに管理会社をアイルランドとは別のタックスヘイブンに置くことで、極限まで節税効果を高めた「ダブルアイリッシュ・ウィズ・ア・ダッチサンドイッチ」と呼ばれる節税スキームだ。アップルのティム・クックCEOは、13年の米議会上院の公聴会に提出した資料において、同社の米国外での全売り上げを会計処理するアイルランドで、長年にわたり2%またはそれ以下しか税を負担していなかったことを認めている。
多くのグローバル企業も、同様の節税スキームを用いている。アメリカ企業の子会社が12年にアイルランドで計上した利益の総額は同国のGDPの6割にあたる1350億ドル(約15.1兆円)。
ルクセンブルクでのそれはGDPの1.2倍にあたる680億ドル(約7.6兆円)にのぼっており、このうちには租税回避による部分が含まれていることが推測される。経済協力開発機構(OECD)は、企業の租税回避により全世界で毎年1000億~2400億ドル(11兆~27兆円)の法人税収が失われていると見積もっている。
課税ルールを127カ国で検討中
こうした状況に、世界各国の税務当局者も動き始めている。国際課税ルールの策定をリードしてきたOECDの租税委員会は、13年から「税源浸食と利益移転」(BEPS)に関するプロジェクトを開始。19年1月に世界127カ国が参加して開かれた「BEPS包摂的枠組み会合」で、課税に向けた今後の検討の方向を示す「ポリシーノート」を全会一致でまとめ、発表した。
このポリシーノートでは、支店などの物理的拠点を前提としない新しい課税権のあり方として、3つの案が示されている。まず、「アマゾン・マーケットプレイス」のようなプラットフォーム・ビジネスやオンライン広告などの「高度にデジタル化した事業」に限定し、アクティブなユーザーが存在する国に課税権を認めるという英国案だ。
もう1つは、顧客リストや継続的な実績といった市場的無形資産――つまり現地でのブランド価値に着目して、利益分割のルールを変え、実際に市場がある国により多くの税収を配分する米国案。そして最後に、その国の市場に一定の“プレゼンス”があると認定できる場合、その国での売上額に当該企業のワールドワイドな利益率を掛けたものを、課税対象の利益額とみなすというインドほか開発途上国の案だ。
もしグーグルが全世界で30%の利益率があるなら、金太郎飴のようにどの国も一律で30%の利益率ととらえる。これはルールとしての粗っぽさは否めないが、わかりやすい。