森友事件で初めて、自分の仕事に納得できました

「いい記者になれたかな、と思ったのは、記者生活31年で、この2年くらい。それまでの29年は自分に自信が持てないことのほうが多かったですね。森友事件を必死に追いかける中で、記者として初めて自分の仕事に納得できるようになりました」

大阪日日新聞(新日本海新聞社)論説委員・記者 相澤冬樹氏

そう語るのは、元NHK記者で、現在は大阪日日新聞記者の相澤冬樹氏。話題の書籍『安倍官邸vs.NHK』の著者だ。学校法人、森友学園への国有財産の格安売却と、それに関わる決裁文書の改竄。その森友事件を明るみにする報道を引っ張ったのが、NHKだ。

中でも相澤氏は2016年7月から大阪司法キャップとして、キーマンだった大阪府私立学校審議会の梶田叡一会長の直撃取材や、籠池泰典理事長(当時)のインタビューなどで「特ダネ」を連発した。本書では、その痺れるような現場、記者の粘り強い取材が、丁寧に描かれている。

しかし相澤氏が出す特ダネニュースには度々、上層部から圧力がかかる。そして、18年5月、相澤氏へ考査部への異動の内示が下される。命じた報道部長は「不本意なことになって申し訳ありません」と詫びた。相澤氏は、NHKを辞めた。

「いい記者にはいろいろな定義があります。取材相手の思いに寄り添える記者、我慢強く取材を続けられる記者。そしてもちろん、スクープをとってくる記者です。