「日本を代表して敬意を込めて推薦した」

トランプ氏の発言は、北朝鮮問題で自分がいかに実績を上げているかを記者団に示そうとして飛び出したものだ。トランプ氏によると、安倍首相は「日本を代表して敬意を込めて推薦した」と語り、ノーベル賞関係者に送ったという5ページの“素晴らしい書簡”を手渡した。トランプ氏は「ありがとう」とお礼の言葉を述べたという。トランプ氏はこの安倍首相とのやり取りがいつどこで行われたについては明かしていない。

トランプ氏は安倍首相が推薦した理由について「日本の国土をまたいで飛び越えるようなミサイルがこれまで度々、北朝鮮から発射されていたが、いまはなくなり、日本国民は安心している。私が北朝鮮と話をつけたからだ」と説明している。

だが日本にとって肝心の拉致問題は解決されていないし、北朝鮮は核・ミサイルの開発を水面下で続けている。トランプ氏にはこう申し上げたい。

「私たち日本人は安心などしていない」

安倍首相を韓国・文大統領と間違えたのか

アメリカの一部メディアでは「安倍首相と韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領とを間違えたのではないか」という憶測記事も出ている。なぜなら文氏は「トランプ氏はノーベル平和賞を受けるべきだ」と話したことがあるからだ。確か、米朝首脳会談が開かれる前の昨年4月だったと思う。ちょうどそのころ、集会などでトランプ氏は支持者たちから「ノーベル賞に値する」と騒がれていた。

ノーベル平和賞の推薦者が安倍首相であろうと、韓国の文氏であろうと、拉致と核・ミサイル開発の問題が解決されていないことは事実である。

トランプ氏と北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)・朝鮮労働党委員長との2回目の米朝首脳会談が、2月27日と28日の両日にベトナムで行われる。拉致と核・ミサイル開発の問題解決にどこまで迫ることができるだろうか。

来年の大統領選に勝ちさえすればいい

2月7日付の朝日新聞の社説は「米朝再会談へ 真の成果へむすびつけよ」と見出しを掲げ、トランプ氏の「一般教書演説」に触れた後、こう書き出す。

「昨夏以来、2回目となる。長く敵対してきた両国の首脳による対話自体は好ましい。しかしトランプ氏の場合、目先の成果の演出と妥協に走り、本来の目的を見失う懸念が拭えない」

「本来の目的を見失う」。まったくその通りである。支持者にアピールすることで、来年の大統領選に勝ちさえすればいいというトランプ流を、朝日社説はよく理解している。

「あくまで朝鮮半島の和平と非核化への道筋を描くことが、会談の狙いであるべきだ。前回のように事前の調整が乏しいままでは真の成果は望めない」

これもその通りだ。沙鴎一歩が前述したように核・ミサイル開発の問題解決へ向けたはっきりした具体的な道筋を米朝間で確認し合う必要がある。いや確認し合うだけでは不十分だ。トランプ氏と金氏の2人が“血判状”を取り交わし、その決意を国際社会に示すべきである。