「安易な取引は止めるべきだ」と忠告すべき

今度の米朝首脳会談ではどうすべきなのか。

産経社説は「2度目となる米朝会談では、北朝鮮に全ての核戦力の申告、検証を受け入れさせるなど、完全な非核化に向けた具体的な行動を引き出さなくてはならない」と主張し、「北朝鮮は米側に『相応の措置』を求めている。体制保証や制裁緩和を指すとみられる。段階的に見返りを与えれば圧力が緩み、核・ミサイルの温存につながる」と指摘する。

そのうえで産経社説は要求する。

「安倍晋三首相は、米朝再会談前にトランプ氏と電話会談を行う意向を表明した。安易な取引に応じぬよう念を押すとともに、中距離ミサイルの廃棄や、拉致問題の全面解決に向けた協力も取り付けてほしい」

安倍首相がトランプ氏と親しい関係にありう、擦り寄るだけの“愛犬”ではないと言うなら、産経社説が指摘するように「安易な取引は止めるべきだ」とはっきり忠告すべきである。

アメリカの大統領に忠告ができてこそ、独立した日本の首相と言えるのではないだろうか。

過去最高の35日間も政府機関の一部が閉鎖

トランプ氏の強権政治によってアメリカは国家の危機に追い込まれている。

2月15日には、メキシコ国境での壁建設の巨額費用を捻出するため、異例の「国家非常事態」を宣言した。この国家非常事態宣言は、戦争や大規模なテロの発生時に大統領に広範な権限を与えるものである。議会承認なしに国家の運営ができる。1976年以降、これまで計約60回発令されてきた。2001年9月11日のあの同時多発テロのときにも発令されたが、たびたび権力の乱用につながると批判されてきた。

トランプ氏にとって壁の建設は第1の公約である。だが、壁建設をめぐっては下院多数を握る民主党と激しく対立。その結果、予算の失効で過去最高の35日間も政府機関の一部が閉鎖される事態を招いた。

トランプ氏は自らの公約を実現するために、本来国民のために行うべき国家非常事態宣言を発したのだ。その政治姿勢は歪んでいるとしか言いようがない。