A.T.カーニーの全社ミーティング(朝礼)は年8回。金曜日の午後6時から2時間にわたり行われる。始まる前から「久しぶり」「元気」と挨拶が交わされる。彼らは日ごろ常駐する企業に通っているので、同僚といえども、なかなか話をする機会がない。
ミーティングの内容は盛りだくさんだ。司会者のスピーチから、業務連絡、各セクションからの研究発表、勤続表彰が続く。目玉が「プライド」と題した10分間のスピーチと「個人表彰」である。個人表彰は日ごろ、「この人は立派なことをやっているな」と感じた同僚に、個人から感謝の心と感謝状を贈るセレモニー。どちらも発案者は若手社員で、「みんなを活気づけようと思った」からだ。
その日の「プライド」発表は女性コンサルタントだった。──常駐先の企業でミスしてへこむことも、相手の言葉に傷つくこともある。でも、その相手と真剣に仕事をし、切磋琢磨して成長してゆく自分を感じる……。彼女は気取らずに、ありのままを話した。同様の経験をしているせいか感情移入し、涙ぐむ同僚もいる。会場には仲間同士がひとつになった気配が流れる。
「個人表彰」では若手社員が「入社前から名前を覚えて、言葉をかけてくれた」事務職の女性に対して感謝状を贈り、お礼の言葉を述べた。
「あなたの笑顔とやさしい言葉で何度も癒やされました。どうもありがとう」
「プライド」も「個人表彰」も仕事相手や同僚とのコミュニケーションの大切さを語るものだ。
ビジネスでは言葉、コミュニケーションが重要だ。人間は言葉で傷つくことがある。しかし、その傷を治してくれるのはこれまた人間の言葉だけだ。ふたりの若手社員の発表には、仕事を円滑に動かしていくためには言葉の使い方、人との接し方に気をつけようという意味が込められていた。
(尾関裕士=撮影)