このページに目がとまった貴殿はなんと運が良いのだろうか。不肖、天野周一、全国7500名の会員数を誇る全国亭主関白協会の会長である。夫婦関係論を述べさせていただくなら右に出る者はいないと自負している。なぜならば、夫婦間に横たわる様々な問題はあまりにも恐ろしくて、誰も語ろうとしなかったからだ。だが亭主の心構え次第で、熟年夫婦の危機はいとも簡単に回避でき、セカンドライフがより楽しいものになることを確約しておきたい。

あれだけ愛し合っていた2人が、いがみ合い、罵り合うようになるのはなぜだろうか。この永遠の謎を解くカギは、2つの真実を理解することから始まる。それは、結婚とは、一番合わない者同士を結びつける神のいたずらであり、その試練を乗り越えた者だけが永遠の愛を手に入れることができるということ。

そしてもう一つは、その神こそ誰あろう、あなたの奥様であるということだ。神でなければ、どうして毎日毎日、手を替え品を替え亭主に試練を与え続けることができようか。そういう意味では、まず神の正体を知ることが先決である。敵、じゃなかった、「神を知り己を知れば百戦危うからず」である。

それには『ああ正妻』(姫野カオルコ著、集英社)を読まねばならない。現代における「悪妻」というものを小説化した本である。主人公の小早川正人氏を自分に置き換え、妻の雪穂さんを自分の奥様に置き換えて読むだけでいい。雪穂さんは、見事な悪妻であり、誰もが亭主の小早川氏にシンパシーを感じるだろう。それはあまりにも浅はかな読後感だと言わざるをえない。女性が妻になれば、多かれ少なかれ雪穂さん的要素が出てくるものである。それこそが女性の可愛さであり、逆に魅力であると受け止めるべきなのだ。妻ほど可愛い生き物がこの世にいるだろうか……機嫌の良いときは。