「ちょっと、お父さんが厳しく叱ってくださいよ!」妻からの突然の指令。さて、どう叱る? 子どもの心に染みる叱り方、できますか?
これからの世の中、子どもが40歳過ぎても結婚もせず、定職にも就かずにいつまでも扶養家族でいるという状況はますます増えるだろうと、明治大学文学部教授であり、教育カウンセラーでもある諸富祥彦さんは見ている。決して他人事ではない。生きていく力は小さい頃からコツコツと育てていかなくては、いざ就活だ、やれ婚活だと焦って始めてもうまくいくわけがない。
子どもの生きていく力を育てることこそ子育てであり、その力をつけるために叱るはずなのだ。
「父親がガツンと叱るというのは母親の都合に合わせた役割期待です。母親の手に負えないから父親というのもありなのですが、父親の役割がそれだけというのはイメージが貧困ではないでしょうか。父親の教育上の役割をきちんと夫婦で話し合うことが必要です。夫婦のコミュニケーションがうまくいっていれば子どもは育つのです」
では父親の役割とはなんだろう。
ひとつは仕事は楽しいという、働くことへのポジティブなイメージを子どもに伝えることだと諸富さんは言う。
「仕事が大変だ。忙しくて辛いのを我慢して、俺は家族のために働いているんだというメッセージを出していませんか? それでは子どもは父親に感謝するどころか、働くのは嫌だなと、仕事にネガティブなイメージを持ってしまいます」
すると成人して就職しても長く続かず、安易に転職を繰り返すことにもなりかねない。
「日本はキャリア教育が決定的に不足しています。両親以外の大人との交流があまりにも少ない。だからいくつになってもやりたいことが見つからないのです。できれば、家にさまざまな職業の友人を招いて、世の中には多くの仕事があって、いろんな面白いことがあるんだと知るチャンスを子どもに与えてください。より具体的な将来の夢が抱けるようになります」
父親は子どもにとって社会との接点。人生を楽しむ姿、仕事を通じ、社会の役に立つわくわく感をもっと子どもに伝えなければいけないのだ。