コミュニケーション能力を高める叱り方

また、生きていくうえで必要なのはコミュニケーション能力とよくいわれるが、叱られる場面こそ子どもがコミュニケーションを学ぶいいチャンスだと、諸富さんは指摘する。

コミュニケーションで大事なことは相手の気持ちを理解しつつ自分の気持ちも伝えること。子どもの言い分も聞きつつ、親の気持ちを伝える。子どもにわかるように理由を説明しなくてはならない。

「コミュニケーション能力をフル活用した叱り方をしていれば、子どものコミュニケーション能力も育つのです。一方的にガミガミ叱っていても育ちません。長い目で子どもが生きる力を持てるよう考えて、いいコミュニケーションのモデルを示すような叱り方をすることです。そういう意味で子どもに対して父親の果たす役割は、決して小さいものではないのです」

諸富さんは子育ての基本は褒めて、成長を一緒に喜ぶことだという。子どもに自分はやればできるという自己肯定のイメージを持たせることが大事で、それが将来、困難な場面に直面しても、頑張れる力になるという。

「20年以上、教育カウンセラーをしていますが、厳格な父親の家庭ほど、家出とか非行、暴力、不登校、引きこもりといった問題が起きやすい。細かいことまでガミガミと怒鳴るのが子育てと誤解している親も多いのですが、それは子どもに自分はダメだというイメージを植え付けているだけです」

最後にもうひとつ、忘れてならない父親の役割が「妻の愚痴をきちんと聞くこと」。ほとんどの家庭では、子育ての主役は母親。親身になって聞くことで妻の抱えている重荷を軽くしてあげることも夫の大事な仕事なのだ。

諸富祥彦

1963年、福岡県生まれ。明治大学文学部教授。20年以上教育カウンセラーを務める。『女の子の育て方』『男の子の育て方』(いずれもWAVE出版)ほか著書多数。
(構成=遠藤 成)
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