購入するにしても、建てるにしても、「住まい」の大きな特徴は、思い立ってから完了するまでの期間が非常に長いという点である。したがって、全体のプロセスを把握し、自分がどのステップにいるかを認識することで、注意すべき点がより明確に見えてくることが多い。

そこで、住宅の購入や建築について、プロセスに沿って体系的に解説している本を選んでみた。

住宅(マンション、戸建て)を買ったり売ったりする際の具体的な手順から資金計画、物件の選び方、契約時の注意点、税金や諸費用に至るまで、基礎知識が網羅されているのが、小菊豊久著『はじめての住まい 買うとき売るとき』(メディアファクトリー)だ。情報誌「住宅情報」編集部が監修する参考書的な書物で、全体像を把握するのによいだろう。

ただし、住宅購入の方向性が定まってくると、もっと領域を限定した本のほうが、ニーズに合うということもある。

例えば、中古マンションの購入について詳しく知りたいなら、自著で恐縮ではあるが、『中古マンション 購入&リフォーム「得」する選び方・改装術』(小学館)がある。

子どもの独立後は、夫婦2人の生活がしやすい都心の中古マンションへの住み替えを考えている方も多いだろう。私はそんな方に、購入時にリフォームして、快適な間取りや設備を実現することをお勧めしている。このとき、希望のリフォームが可能かなど、中古マンションならではの物件チェックが不可欠となってくる。

本書では、中古マンションへの住み替えを成功させるための手順や予算の考え方、物件の選び方を詳しくまとめている。中古マンションの購入だけに絞った拙著『中古マンション 「得」する買い方・選び方』(小学館)もあるのでご参考までに。

住宅を建てる場合なら、『家づくり至高ガイド2009』(エクスナレッジムック)がよいだろう。住宅を建てる際の手順から、マネー、法規制、構造、設備などの幅広い基礎知識が網羅されている。

法規制や構造については難しく感じる部分はあるかもしれないが、宅地の法規制によって、どの程度の広さや高さの家が建てられるかなどが変わるし、建物の構造がもたらすメリット・デメリットもあるので、基本的なことは理解しておくべきだ。

一戸建てを購入する場合でも、法規制や構造などに関する知識は必要なので本を読んでおいて損はない。やや専門性が高くなるものの、姉妹本に『家づくり究極ガイド』もある。

ところで、住まいに関する書物のなかで、賃貸住宅に関するものは少ないのが実情だが、退去時の原状回復など、意外にトラブルも多い。

そこで、『住宅賃貸借(借家)契約の手引(平成20年度改訂版)』(不動産適正取引推進機構)を紹介したい。これは書店等で販売しているものではないが、不動産適正取引推進機構に申し込めば購入できるものだ。賃貸住宅の契約時、更新を含む居住中、退去時など、トラブルに巻き込まれないように、注意すべき点がまとめられている。

こうした公的機関が発行する書物を利用すると、安価というだけでなく、意外なメリットもある。

「公的な資料にはこう記載しているが……」と不動産会社などと交渉すれば、それが間違っているとは言いづらいので、交渉が進めやすいという側面もあるからだ。

住宅の売買についても、姉妹本の『不動産売買の手引(平成20年度改訂版)』があるので、参考にするとよいだろう。