最近の熟年離婚には、金融不安による不況の影が見られます。熟年離婚は、子育ての手が離れた妻から話を切り出すケースが多いのですが、その一方で仕事を持たず、経済基盤が弱い妻の場合には、将来の生活を考えて離婚したくても我慢するケースも増えているようです。

また、熟年離婚の理由として、夫による妻へのドメスティック・バイオレンス(DV)がありますが、最近は反対に、妻による夫へのDVも深刻化しています。「稼ぎが少ない」「甲斐性なし」と夫をなじる言葉の暴力にとどまらず、殴る蹴る、凶器を突きつけるといった肉体的な暴力も少なくないようです。

2008年、東京都が行ったDV電話相談の分析では、そうした妻からの暴力が相談件数の4割を占めたそうです。その背景にもリストラや早期退職といった不況の影が感じられますが、さらには離婚を我慢する妻の鬱屈が、夫への殺意にまでつながるというケースも出始めています。夫婦仲がうまくいかず、家庭内別居のような状況に陥っても婚姻関係を頑なに維持することが得策なのかどうか、一考を要する時代になっているのかもしれません。

そこで離婚を考えたときにまず手にとってほしいのが『離婚・内縁解消の法律相談』(山之内三紀子編、青林書院)です。弁護士を執筆者に編まれた専門書ですが、離婚にかかわるほとんどの事柄がQ&A方式で整理されており、弁護士が実務に活用している書物でもあります。

一般の離婚ハウツー本では、取り上げられている事例が自分のケースに合わないことがよくあります。しかし、この専門書は事例が詳細ですから、自分のケースに合った項目を拾い読みしていくことで、離婚交渉や訴訟、離婚手続きの実際を知ることができます。

私の著書『男と女の法律戦略』(講談社現代新書)は、上記の法律相談書などに収まり切らないケースを取り上げ、有利に離婚交渉を進めるための心構えと方策を解説したものです。

たとえば、離婚調停に入りながら、妻が離婚せず、夫から生活費をもらって悠々と暮らしているというようなケースがあります。こうした事例は、離婚相談の書物ではあまり取り上げられません。

離婚には多くの時間とエネルギーを要し、費用もかかります。実利を生まない争いごとは不毛ですから、感情に流されずに交渉を進めることが大切です。そのための要点と戦略に重きを置いて書いた本です。

同じく拙著『小説 離婚裁判』(講談社文庫)は、言葉によるDV、モラル・ハラスメントを題材にした小説ですが、離婚裁判・調停手続きの展開を忠実に描きました。これら2冊を、前記の法律相談書と併せてお読みになれば、離婚準備に何が必要かがおわかりいただけるはずです。

一方、熟年世代の単身者で再婚を望まれる方にお薦めが『プログラム』(レイチェル・グリーンウォルド著、ソニー・マガジンズ)です。著者はハーバード大学ビジネススクールを卒業した女性で、マーケティングの専門家。そのMBA理論を“婚活”に応用したユニークな書物です。

主に30代以上の女性が対象の本ですが、ビジネスマンとして仕事で蓄積してきたノウハウが、実は再婚の相手探しにそのままスライドできることを教えてくれます。その意味で50代の人が読んでも、大いに参考になると思います。積極的にアクションを起こすときの戦術と、自分を上手にプレゼンテーションするノウハウが詰め込まれています。

(構成=高橋盛男)