「親が倒れ、命を取り留めたものの、病院からは早く退院しろと言われるし、一人暮らしはとても無理。どうしたらいいのか……」

こんな切羽詰まった声が、いたるところで聞かれる。他人事とは思えない人も多いはずだ。

このテーマを追いかけて20年以上になるが、親の介護で悩む人は年々増えている。今や介護は性別を問わず、誰が遭遇しても不思議はない。介護者の4人に1人は男性となり、井戸端会議ならぬ酒席の話題にも上る時代となった。仕事との両立に悩む男女も増えている。

特に最近目立つのは、たった一人で孤軍奮闘の介護を余儀なくされる「一人介護者」の増加だ。ひとりっ子が増え、兄弟がいてもせいぜい2人が主流の今、気がつけば介護を担うのは自分だけ、ということが少なくない。「同居の母に介護が必要になったが、姉は遠方に嫁いでおり、一人でお手上げ」といったケースだ。

そんな事態で目の前は真っ暗、頭の中が真っ白になったとき、いの一番にお薦めしたいのが拙著『一人でもだいじょうぶ 親の介護から看取りまで』(日本評論社)だ。

何を隠そう、ひとりっ子である私自身の両親介護ドタバタ体験記なのだが、16年におよんだ介護から看取り、葬儀やお墓まで、悔いや後の祭りの失敗談も含め、知っていれば鬼に金棒の智恵や知識がギューッと詰まっている。巻末には、制度の押さえどころなど「一人でも安心『介護便利帖』」も併記。手前みそだが、親身なアドバイスが満載で、一人介護者はもとより、介護ビギナーが先を見通す照明灯として最適だ。

いざ介護が始まり、「車いすの押し方もよくわからない」「排泄や入浴、食事の介助はどうしよう……」とケアに悩む人には、『新しい介護』(大田仁史、三好春樹監修・著、講談社)が実践指南書として心強い。少々高価で辞書並みに重いのが難点だが、介護現場でも人気のカリスマ専門家による目から鱗の介護フィロソフィーと技が、豊富な図とともに解説されており、素人にもわかりやすい。

また、介護といえば認知症が気になる向きも多いだろう。要介護者の2人に1人は認知症を発症している時代だが、加齢とともにその発症率は激増する。「徘徊で目が離せない」「盗っ人呼ばわりされて情けない」「他人にはまともに応対するので、信じてもらえない」などなど、家族が抱える不安や悩みは尽きない。

そんなときは、『認知症なんでも相談室』(三宅貴夫著、日本医療企画)がわかりやすい。認知症の見分け方から日常の対応まで、ケース別のQ&A方式で、認知症医療と介護のツボが網羅されている。認知症は、対応のコツさえ掴めれば、家族の負担がグンと楽になることが多い。

自宅で介護から看取りまで可能なケースは、まだまだ条件に恵まれた一部に限られる。「家での介護はもう限界」「一人になった親の終の住み家を探したい」など、介護施設やケア付き住まいを検討中の方には、『選ぶ介護2009 AERA臨時増刊』(朝日新聞出版)が役立つ。

全国47都道府県の有料老人ホーム(介護付き+住宅型)1453施設の介護体制や医療対応、居室の広さや費用などの最新データが一目瞭然で比較できる。情報公開の透明性や一時金返還の健全度などの判定付きだ。複雑でわかりにくい高齢者向け住まいのガイダンスもついている。

少子・長寿高齢社会において、介護のリスクヘッジは子世代である50代の安心には欠かせない。この4冊で視界が拓けることだろう。